羽毛で髪が甦るかも “発想の転換”から生まれた髪の若返り成分FCG

大学発

トリの羽毛から抽出された発毛・育毛・脱毛予防効果のあるの夢の商品が誕生するかもしれない。研究の主体はレオロジー機能食品研究所(福岡県糟屋郡久山町)。成果は2017年9月のフクオカベンチャーマーケットでも発表された。

レオロジー機能食品研究所の代表を務めるのは、九州大学名誉教授の藤野武彦先生だ。藤野社長は現役の医師でもある。レオロジー機能食品研究所ではもともと、鶏肉由来の「スフィンゴ脂質」というセラミドの研究を行っていた。

「研究を続ける過程で、廃棄物の有効利用としてトリの皮に興味を持ち、『羽毛の紫外線防御の役割とヒトの発毛の関係があるのではないか』という仮説が生まれた」のが素材誕生のきっかけだったという。羽毛の機能性を調べていくと、「コレステリルグルコシド(CG)」という成分を効率的に抽出できることがわかった。羽毛由来のCGは「FCG」と呼ばれるそうだ。

毛周期が休止期にある8~9週齢のマウスを使って背側剃毛皮膚に各濃度の試薬を塗布する試験では、1mlあたり1pgのFCGが発毛に最適な濃度であることが確認された。その後、構造が似ているステリルグルコシド(SG)でも同様の試験を行ったが、効果はCGよりも弱かった。

FCGの塗布から3時間後の背側剃毛皮膚を調べた結果、細胞の分化や増殖が促進されること、毛球内に微小血管が誘導されることがわかった。毛球は“髪の毛の製造工場”に該当する。さらに3時間が経過した塗布6時間後には、毛根が肥大化して皮下組織にまで達し、毛根の数も増えていた。

ヒトを対象にした試験でも効果は確認されている。100mlあたり100pgのFCGを継続して12週、頭部に塗布してもらい、医師評価、写真撮影による頭髪部の評価、脱毛数の評価が行われた。あわせて、診察、血圧や脈拍を確認する生理学検査、血液、尿を調べる臨床検査といった安全性も評価された。

試験の結果は以下のとおり。参加者9人のうち、著明改善2人、中度改善5人、軽度改善1人に対し、無効1人、悪化0人というものだ。脱毛数は、塗布6週間後から脱毛数の多い人では著明に減少した。安全性評価についても、臨床上問題となる所見は見られなかった。

藤野先生によると、「市販されている発毛剤・育毛剤の例を挙げると、100mlあたり5gのミノキシジルが含まれている。FGCは5億分の1の濃度でいい。低濃度で安全性が高く、効果が早いのが特長といえる」と胸を張る。なお、男性型脱毛症だけでなく、女性の脱毛に対する効果も期待できるとのこと。

レオロジー機能食品研究所では現在、商品化を目指して協力企業を募るとともに、自社で長年研究してきたプラズマローゲンといった新成分の配合による改良も検討している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。