五島発のツバキ発酵茶 透析患者の心血管疾患予防効果に期待

緑茶三番茶葉とツバキ葉を揉捻して発酵させたお茶が、透析患者の心血管疾患(CVD)予防に役立つかもしれない。長崎県では現在、健康×地域活性化の取り組みを産学官医連携で進めている。

緑茶は長崎県の特産品の一つだが、夏から秋にかけて摘み取られる三番茶葉や秋冬番茶葉は、春から夏にかけて収穫される一番茶葉や二番茶葉よりも品質が劣るため、刈り取った後に廃棄されてきた。また、長崎はツバキの産地としても知られている。実際、ツバキは長崎県の花木に指定されている。五島列島は長崎県最大のヤブツバキの自生地だ。種から抽出されるツバキ油が有名である一方、葉はこれまでほとんど利用されていなかった。

未利用資源に目をつけたのが、産学官の研究チームだ。ごとう茶生産組合の入江稔雄組合長を中心とする生産者は、長崎県農林技術開発センター茶業研究室、長崎県農林技術開発センター森林研究部門、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科、長崎県立大学大学院人間健康科学研究科と共同で、緑茶三番茶葉とツバキ葉を9:1の比率で混合して揉捻する新たな発酵法で、香味に優れるツバキ発酵茶を開発した。ラットによる動物実験では、ツバキ発酵茶には脂質代謝を改善させる働きがあることが確認されている。

【リンク】ツバキ混合発酵茶の開発(長崎県農林技術開発センター)

農薬や化学肥料を使用しない自然農法で茶を栽培するの入江稔雄さん

機能性研究において高いハードルとなるのがヒト介入試験だ。ツバキ発酵茶の試験には、那珂川病院(福岡市南区)で外科、血管外科、人工透析、皮膚科を診ている行實崇先生も加わった。透析患者の皮膚のかゆみやただれ、透析導入時に必要なシャントという人工血管の手術の実績に関する講演で五島に招聘されたさい、ツバキ発酵茶の研究を事務局から紹介されて興味を持ち、チームに参加することになったという。

行實先生は、「健康な人と比べて、透析患者はCVDのリスクが10~30倍も高い。脂質異常症はCVDの危険因子とされ、特に心筋梗塞の発症と関係が強いことがわかっている。透析患者に対するツバキ発酵茶の有効性を検証したいと考えた。お茶としては珍しく、農薬や化学肥料を使わない自然農法で栽培されているという安心感のほか、生産者を応援したいという想いもあった」と、ツバキ発酵茶との出合いを振り返る。

ツバキ発酵茶の機能性について解説してくださった行實先生(福岡にて)

行實先生がくまクリニック副院長を務めていた2013年以降、試験は2回実施された。1回め(以下「試験1」)は入院透析患者8人と通院透析患者3人の計11人、2回め(以下「試験2」)は通院患者27人を対象とした。空腹時の血清中性脂肪濃度は、試験1参加者は62~227mg/dL、試験2参加者は43~392 mg/dLだった。

試験1は、患者11人を食事といっしょにツバキ発酵茶を飲む群(男性3人、女性5人、平均年齢69.3歳)と飲まない群(男性2人、女性1人、平均年齢68.3歳)の2群に分けて行われた。ツバキ発酵茶摂取群には、90℃、200mLの熱水に茶葉1.0gが入ったティーパックを3分以上、浸したものを朝・昼・晩の食事ごとに飲んでもらうようにした。一方、非摂取群には、ふだん飲んでいる緑茶か麦茶を200mL飲んでもらった。試験期間は2013年5月から3ヵ月。試験開始前、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後の透析前に採血を行い、血液を分析した。

その結果、ツバキ発酵茶摂取群の血清中性脂肪濃度は非摂取群より低く推移した。また、試験期間中、ツバキ発酵茶摂取群の血清中性脂肪濃度が少しずつ低下しながら推移したのに対し、非摂取群では3ヵ月後から上昇する傾向が見られた。さらに、ツバキ発酵茶を飲んだ8人は3ヵ月後、便秘が改善し、緩下剤が不要になるという結果も得られた。行實先生いわく、「腎不全患者を悩ませる一つが便秘だ。うれしい効果といえるが、有効成分や作用機序の解明には至っていない」とのこと。

2014年12月から実施された試験2では、通院透析患者27人(男性15人、女性12人、平均年齢67.3歳)を対象とした。ピーチ味、ブルーベリー味をつけた五島つばき茶を朝・昼・晩の食事ごとに200mL、1か月間飲んでもらうという内容だ。ティーパックには試験1の1.5倍となる茶葉1.5gを入れ、抽出時の温度は90℃、1回あたりの摂取量は200mLとした。

試験開始前、2週間後、1ヵ月後、飲用終了2ヵ月後の透析前に採血を行った結果、1ヵ月後の採血で、血清中性脂肪濃度に有意な低下が認められた。しかし、飲用終了2ヵ月後には数値は上昇し、摂取前の血清中性脂肪濃度に戻っていることがわかった。試験1、試験2ともにALT、ASTといった肝機能値、総コレステロール濃度、HDLコレステロール、LDLコレステロールに変動はなかった。

2回の試験で、ツバキ発酵茶を飲めば血清中性脂肪濃が下がり、飲むのをやめれば元の値に戻ることがわかった。行實先生は、「動物実験などの結果もあわせると、ツバキ発酵茶に特徴的に含まれるカテキン類、テアシネンシン、高分子ポリフェノール、サポニンが膵リパーゼという酵素の活性を阻害して、小腸からの吸収を抑制していると考えられる」と話している。

今後は、「体脂肪を減らす」「中性脂肪値を抑える」など商品パッケージに健康効果を表示できる機能性表示食品としての商品化や、オーガニック×健康という切り口で、東南アジアや中東など、イスラム圏への売り込みを視野に入れながら研究を進めていく予定だ。

 

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