廃棄されていた節レンコンに豊富なポリフェノール!糖尿病・高血圧の予防・改善に役立つ食品の開発目指す

地域発

尚絅大学短期大学部の相良剛史准教授らは、廃棄されていた節レンコンの健康機能性を研究している。徳島県ではレンコンの生産が盛んだが、病害虫や台風による収穫減のリスクから、未利用部位の利用で収益性向上が模索されてきた。2012年、レンコン節のポリフェノールが持つα-グルシコダーゼ阻害活性とACE阻害活性が明らかになった。節レンコンを加工して、糖尿病や高血圧の予防・改善に役立つうどんやパンの開発が検討されている。

徳島県は全国3位のレンコンの生産量を誇る。同県で生産されているレンコンの品種は、「備中」が主力だ。生産量が多いものの、備中は病害虫に弱く、収穫最盛期を迎える秋に台風被害を受けやすい。徳島県では、収穫されたレンコンの収益性向上を目的として、生産量の2〜3割を占める未利用部位の利用を模索してきた。

中心となって研究を進めてきたのが、尚絅大学短期大学部食物栄養学科の相良剛史准教授だ。節レンコンの機能性研究が始まったのは、相良准教授が四国大学短期大学部人間健康科に勤務していた2011年にさかのぼる。

「徳島県立農林水産総合技術支援センターから、レンコンの未利用部位の利用について相談された。先行研究を調べると、未利用部位のうち節レンコンには可食部位よりも豊富にポリフェノールが含まれていることがわかった」と、相良准教授は振り返る。レンコンに含まれているプロアントシアニジンというポリフェノールには、食後血糖値の上昇抑制作用や血圧の降下作用などがあると報告されている。

相良准教授らは節レンコンのポリフェノールについて、α-アミラーゼおよびα-グルシコダーゼ阻害活性の検証を開始した。α-アミラーゼとα-グルシコダーゼ阻害活性は食後血糖値の上昇を抑制し、2型糖尿病の心血管合併症予防に役立つとされている。相良准教授によると、「節レンコンには可食部の約10倍のα-アミラーゼ阻害活性と、約2倍のα-グルシコダーゼ阻害活性があることがわかった。2012年3月のことだ。可食部の約3倍に相当するポリフェノールがレンコン節に含まれていることもわかり、機能性の検証を進めていった」とのことだ。

2012年6月には、レンコン節のACE阻害活性について検証された。ACE阻害活性は、高血圧の改善に役立つ生理活性だ。実験の結果、レンコン節のACE阻害活性は可食部位の約5倍であることがわかった。

節レンコンを添加したパンなどを開発中(相良准教授提供)

「節レンコンのα-アミラーゼ阻害活性、α-グルシコダーゼ阻害活性、ACE阻害活性は、加熱しても低下しない。レンコン節粉末は、うどんやパンなど主食となる加工食品の原料として利用できる。生活習慣病予防に役立つ主食を開発したい」と、相良准教授は今後の展望について話している。現在、相良准教授はレンコン節の機能性について詳細な成分分析のほか、効果を検証するための動物実験について四国大学短期大学部の西堀教授に相談中だ。

コウノトリが子育てを行う徳島県では、コウノトリとの共生を目指した農業が進められている。2017年には、化学肥料や農薬を削減して栽培されたレンコンが「コウノトリおもてなしレンコン」としてブランド化され、高付加価値化は前進している。未利用部位の利用が進めば、収益性はさらに高まるはずだ。生産者の挑戦を機能性研究が後押ししている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。