近大マンゴー剪定葉から抗糖化成分発見 機能性食品や化粧品開発など有効活用法の確立目指す

大学発

近大マグロで知られ、全国的な人気を誇る近畿大学。2018年度の志願者数が過去最高を記録し、一般入試の志願者数が5年連続で日本一となった同大学の附属農場湯浅農場では30年以上、マンゴーが栽培されている。これまでにマンゴーの新しい品種の開発に成功したほか、近年の研究では、葉に糖化を抑える働きがあることもわかってきた。

マンゴーといえば、スイーツのように濃厚な甘みと特有の香りが人気のフルーツで、ジュースや缶詰などにも加工されている。国内における生産量ランキングを見ると、沖縄県、宮崎県、鹿児島県が上位3県に名を連ねる。南国の果樹であるマンゴーの新品種が湯浅農場で生まれたのは、2008年のことだ。近大マンゴー「愛紅(アイコウ)」は現在、百貨店などでも販売され人気となっている。

出荷前の近大マンゴー(アーウィン種)。百貨店でも販売されている

「1952年に開設された湯浅農場は、醤油発祥の地である紀伊半島西部海岸の中央部、和歌山県有田郡湯浅町にある。“有田(アリダ)ミカン”の本場としても知られる土地だ。比較的温暖な気候を活かし、1987年からマンゴーの栽培研究に取り組むようになった」と話すのは、近畿大学附属農場湯浅農場の伊藤仁久講師だ。

伊藤講師は薬学部在籍時、薬用資源学を専門とする故・松田秀秋教授(元近畿大学薬学部教授、2017年逝去)の指導のもと、摘果果実などの未利用農産資源の有用成分を研究してきた人物で、柑橘類の果実成分からメラニン産生抑制効果、アレルギー抑制効果、血流改善効果を見出してきた実績を持つ。

近大マンゴー(アーウィン種)の木成りの様子。伊藤仁久講師は廃棄される葉に目をつけた

主に柑橘類果実について研究してきた伊藤講師らは2014年、薬学部、生物理工学部と学部横断でマンゴーの葉の有効活用法の検討に着手した。伊藤講師は、「栽培過程で剪定した後、年間1㌧以上の葉が処分されていた。いくつかの工程を経て廃棄処理されるため、手間とコストを軽減する方法が求められていた」と当時のようすを振り返る。

日本ではなじみがないが、酸味を持つマンゴーの葉は、海外では油っこい料理と一緒に食されている。伊藤講師は葉に食経験があることに目をつけ、老化の原因物質「終末糖化産物(AGEs)」の産生抑制作用を調べることにした。AGEsとは、糖化反応によってタンパク質と糖が結合してできる物質の総称だ。血管や臓器に蓄積すると炎症を引き起こすことがわかっている。

近大マンゴー(アーウィン種)の果実収穫後の剪定の様子。葉に抗糖化作用があることがわかってきた

「調べていくと、葉から抽出したエキスにはAGEs産生抑制作用があることがわかり、有効成分の同定にも成功した。花、果皮、種子にも同様の抗糖化作用は認められたが、資源量の確保も考えると、葉を使用するのがいいだろう。AGEs産生を抑制する医薬品が市販されていない中、マンゴーは一つの選択肢となりうる」と、葉に狙いを定めた伊藤講師の読みは当たった。

糖化によるAGEsの蓄積は、シミ・シワ・たるみといった肌の老化をはじめ、糖尿病や腎臓病、ガンや認知症にも関与しているとされる。機能性食品や化粧品の素材として研究成果を社会に還元すべく、伊藤講師は企業との連携を通じて応用研究を進めていく方針だ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。