シークヮーサーに含まれる成分が、細胞の中にある「核内受容体」を活性化させるかもしれない。核内受容体はビタミンやホルモンの受け手で、代謝にかかわるスイッチの役割を果たす。効果は細胞実験で確認された。新たな付加価値により、沖縄産シークヮーサーのさらなる認知アップをめざす。
事業の主体は「おきなわ農業成長産業化推進事業」を受託しているJAおきなわとクロックワーク(那覇市)で、試験には北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)、国立研究開発法人・産業技術総合研究所(産総研)も参加している。
シークヮーサーには血圧や血糖値を下げる働きがあることは以前から知られていた。2016年度に行われた試験で、そのしくみが明らかになった。ヒトが持つ18種類の受容体に種を含むシークワーサー抽出物を添加した結果、4つの受容体が活性化。糖の取り込みや脂肪燃焼、肝臓によるアルコールの解毒機能を助ける働きのほか、抗炎症作用があることが確認された。
今年の4月には「沖縄シークヮーサー」という地域団体商標登録が承認された。果実や加工品といった商品や原材料に認定ロゴマークをつけて、統一ブランド化を図る。また、糖代謝や肝機能改善効果など、試験で確認された効能に関する特許も申請している。
抽出成分ではなく、果実そのものの効能特許が申請されるのはまれで、前例は北海道のギンマメの1例しかない。クロックワーク社の産学官推進プロジェクト担当の山口振一郎氏によると「県外産や海外産の類似柑橘類を使った商品、沖縄シークヮーサー以外の柑橘類をブレンドした商品からプロテクトする狙いがある」とのことだ。
今後、さらなる研究を進め、機能性表示の取得に向けて準備を進めていく考えだ。一方で、品質面での課題もある。シークヮーサーの機能性成分にはノビレチンやタンゲレチンが挙げられるが、収穫時期により含有量にはばらつきがある。有効成分のピークは9~10月になることがわかっている。機能性表示を取得する商品については、健康効果を一定にするために、9~10月に収穫したシークヮーサーだけを原料として使用することを検討している。