海外からも注目される和食 麹菌成分のグルコシルセラミドで腸、超々いい感じ

大学発

和食はやっぱり健康によかった――。甘酒や濁り酒、味噌や塩麹などを毎日少しずつ取るだけで、腸内環境が改善することが明らかになりつつある。

佐賀大学農学部生物環境科学科の北垣浩志教授らの研究グループは、麹菌に含まれるグルコシルセラミドという成分が「ブラウティア・コッコイデス菌」という腸内善玉菌を増やすことを2016年に世界で初めて報告した。その後、和食に含まれるグルコシルセラミドを推定する方法も確立。調理の工夫しだいで無理なく摂取できる量で健康効果が得られるとして、今後のさらなる研究が期待される。

麹は、清酒、味噌、しょうゆ、甘酒、酒粕、焼酎粕、酢、黒酢、塩麹など、日本の伝統的な醸造食品に用いられる。北垣教授は、和食の健康効果のカギを握るのは麹であるという仮説のもと、グルコシルセラミドの研究を続けてきた。グルコシルセラミドは、グルコースにセラミドが結合したスフィンゴ脂質という脂質の一種で、発酵食品のほか、コンニャクやキノコ、大豆などにも含まれ、保湿成分としても知られている。

北垣教授が麹から抽出・精製したグルコシルセラミドをマウスに与え、ゲノムを用いて糞を分析した結果、腸内細菌叢が摂取前と変化していることがわかった。顕著な変化がブラウティア・コッコイデス菌の増加だった。「善玉菌として近年注目を集めているブラウティア・コッコイデス菌には、大腸の炎症を抑える働きや精神の安定をもたらす働きがある。良好な腸内環境は健康長寿の土台だ」と北垣教授は話す。

麹の腸内環境改善効果が確認された一方で、課題もあった。醸造食品に含まれているグルコシルセラミドの量は、これまで明らかになっていなかった。

北垣教授は、スフィンゴ脂質を分解してグルコシルセラミドを定量する「OPA化HPLC法」と、簡易的にグルコシルセラミドを測定する「TLC‐オルシノール硫酸染色法」といった既存の手法を組み合わせ、醸造食品中のグルコシルセラミド量を推測する回帰式を導き出した。

回帰式を用いて測定した結果、甘酒、濁り酒、塩麹は1杯あたり0.74~4.15mgと、グルコシルセラミドが特に豊富であることがわかった。味噌にも0.37mgのグルコシルセラミドが含まれるが、しょうゆや酢は微量となった。

標準的な食事をとっている日本人の1日あたりのグルコシルセラミドの摂取量は26~77mgといわれている。「マウス実験や日本人の食習慣を考慮すると、体重60kgの人は1日100mg程度のグルコシルセラミドの摂取で腸内環境の改善が期待できる。醸造食品を上手に取り入れれば達成できる量」と北垣教授。今後のさらなる研究が必要だが、甘酒1杯、濁り酒1杯、味噌1椀、塩麹で調理した肉100gで、グルコシルセラミドの摂取量は8.69mgになり、調理を工夫すれば健康の維持・増進にプラスとなりそうだ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。