スプラウトを発酵させることで機能性成分が増加 静岡大学名誉教授に聞いた発酵そばの芽

地域発

アミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれている新芽野菜「スプラウト」を乳酸発酵させることで、健康の維持・増進に役立つ機能性成分が大幅に増加することが明らかになりつつある。『科学・技術研究』に投稿された「野菜スプラウトの機能性の最近の進展─発酵ソバスプラストを中心に─」では、各種スプラウトや発酵ソバスプラウトの特性が取りまとめられている。論文投稿者である静岡大学の衛藤英男名誉教授に話を聞いた。

スプラウトと呼ばれる新芽野菜には、アミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれている。静岡大学の衛藤英男名誉教授は、スプラウトの機能性研究を続けている一人だ。衛藤名誉教授が2020年に発表した「野菜スプラウトの機能性の最近の進展─発酵ソバスプラストを中心に─」では、ブロッコリースプラウトや発芽玄米といった各種スプラウトの研究の歴史や特長などが紹介されている。

「味や食感、彩りをよくしてくれるスプラウトは、サラダやみそ汁などにおすすめの食材だ。不足しがちな栄養素を手軽に補えるのも、スプラウトの魅力の一つといえるだろう。近年の研究で、乳酸菌や酵母を用いてスプラウトを発酵させることで機能性成分が大幅に増えることがわかってきた」と話すのが、論文投稿者の衛藤名誉教授だ。衛藤名誉教授は2008年以降、発酵ソバスプラウトの機能性研究を続けてきた。

リンク:野菜スプラウトの機能性の最近の進展─発酵ソバスプラストを中心に─

衛藤名誉教授らの研究では、不二工芸製作所(静岡県富士宮市、前島正容社長)のソバスプラウトが使用された。衛藤名誉教授によると、「ソバには高血圧や動脈硬化の予防・改善効果があるとされるルチンが豊富だ。ソバスプラウトには、ソバの実の10倍以上のルチンが含まれている。ルチンの量が発芽6日めにピークに達することもわかってきた。そのほか、ソバスプラウトにはアントシアニンやシス・ウンベル酸などの機能性成分が含まれている」とのことだ。

ソバスプラウトから搾汁された青汁

衛藤名誉教授らの研究の狙いは、発酵によるソバスプラウトの特性の変化を明らかにすることにあった。「ソバスプラウトを搾汁して得られる青汁に乳酸菌を添加すると、緑色だったエキスは赤色に変化する。成分を調べたところ、アントシアニンの一種で発酵エキスに赤色をもたらしているケラシアニンのほか、アミノ酸、アスパラギン酸、リジン、メチオニンなどは青汁の2〜5倍に、GABAは約20倍に増加していることがわかった」と衛藤名誉教授は解説する。

発酵ソバスプラウト。機能性成分が発酵によって増加していることがわかっている

衛藤名誉教授は、発酵ソバスプラウトの抗酸化作用と降圧作用を検証した。抗酸化物質を探索したところ、インドール-3-エタノールとケルセチンが確認された。衛藤名誉教授は、「インドール-3-エタノールは、ソバスプラウトには存在しない成分だ。ケルセチンについては、発酵によって含有量が大幅に増加していることがわかった。その後の実験では、発酵ソバスプラウトの抗酸化活性は青汁の3〜4倍で、アスコルビン酸という抗酸化剤の2倍になることが明らかになっている」と振り返る。

一方、血圧の上昇を引き起こす「アンジオテンシン(ACE)II」という生理活性物質の生成阻害物質を調べる実験では、ニコチアナミン、2”-ヒドロキシニコチアナミンが確認された。含有量はそれぞれ、ソバスプラウトの青汁の2.7倍、3.3倍だった。衛藤名誉教授によると、「ACE阻害活性を確認すると、発酵ソバスプラウトの活性は青汁の4倍であることがわかった。発酵によってたんぱく質の分解が進んだ結果、3種類のペプチドも新たに見出された。ACE阻害活性には、これらのペプチドの関与も示唆されている」とのことだ。

機能性成分の増加のほかにも、ソバスプラウトを発酵させるメリットはあるという。衛藤名誉教授は、「ソバアレルギーを引き起こすたんぱく質が、発酵によってほとんど分解されることがわかった。逆に、抗アレルギー作用が増すという結果が得られている。ソバスプラウトの青汁には、アレルギー症状を引き起こすヒアルロニダーゼという酵素の阻害活性があることが報告されていたが、乳酸発酵によって活性が約7倍に増強されることが明らかになった」とのことだ。

衛藤名誉教授は、「サプリメントなどの形状でしか摂取できないものもあるが、スプラウトはふだんの料理に加えるだけで無理なく継続して食べられる。食による病気の予防の重要性は増していくだろう。今後、ネギやニラ、モロヘイヤやカイランなどのスプラウトや、それらの発酵エキスが新たに出てくることも楽しみにしている。健康食材としてのスプラウトに注目してほしい」と、衛藤名誉教授は最後に話してくれた。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。