黒大豆種皮ポリフェノールで血管年齢が若返った!“兵庫丹波黒”のブランド化、産学官で後押し 神戸大

地域発

神戸大学大学院の山下陽子准教授は、黒大豆種皮に含まれるポリフェノールの機能性研究を続けている。2018年には、煎り黒大豆粉末入りクッキーを用いたヒト試験で、動脈年齢の若返り効果を確認。2019年以降は、兵庫県のブランド黒大豆「兵庫丹波黒」の独自性の解明に向けた試験の準備を進めている。兵庫発の機能性表示食品の開発が当面の目標ということだ。

黒大豆は黒い種皮が特徴的な大豆の一種で、正月料理の煮豆など古くから日本人に親しまれてきた。黒大豆の作付面積で全国2位を誇るのが兵庫県。全国の総作付面積6213haのうち、兵庫県は1385haを占めている(1位の北海道は2432ha)。兵庫県のなかでも、丹波篠山市は全国的に最も有名な黒大豆の産地の一つだ。

丹波篠山市は丹波黒の発祥の地

丹波篠山市では、高級黒大豆である「丹波黒」という品種が主に栽培されている。丹波篠山市は丹波黒の発祥の地で、同品種は1980年代以降、日本で広く知られるようになっていった。その後、2008年には産学官連携で「兵庫県丹波黒振興協会(兵庫県神戸市、芦田均会長)」を設立。優良系統の種子をもとに兵庫県内で生産された丹波黒を「兵庫丹波黒」と定めたうえで、味を追求しながら機能性の解明にも力を入れてきた。

丹波黒の機能性研究を続けている神戸大学大学院の山下陽子准教授

神戸大学大学院農学研究科の山下陽子准教授は、機能性研究を手がけている一人だ。兵庫県特産の丹波黒に対する興味を持ち、山下准教授は兵庫県丹波黒振興協会の会長も務める芦田均教授のもと、博士課程在籍時の2010年から黒大豆の研究に携わってきた。「黒大豆の種皮には、カテキンやエピカテキン、プロシアニジンやシンナムタンニンなどのポリフェノールが豊富に含まれている。2011年に行った試験では、黒大豆種皮ポリフェノールに優れた抗酸化作用があることを確認した」と話すのが、山下准教授だ。

その後、2013年に抗酸化酵素の体内産生を促進する作用を確認した山下准教授は、黒大豆種皮ポリフェノールによる血管の若返り効果の検証を進めていった。「血管の老化は、主に酸化ストレスによって進んでいく。黒大豆種皮ポリフェノールの体内における働きを確かめていきたいと考えた」と、山下准教授は研究の狙いを解説する。

試験の前には、黒大豆の加工法が検討された。黒大豆種皮ポリフェノールは、水に溶けやすい性質を持つ。煮豆には、有効成分であるポリフェノールがほとんど残らないそうだ。一方で、硬い黒大豆を煮ないで食べるには工夫が必要となる。山下准教授がいくつかの加工法を比較したところ、より多くの黒大豆種皮ポリフェノールを豆に残すには煎るのが最適であるとわかった。

黒大豆種皮ポリフェノールが含まれる煎り黒大豆クッキーで動脈年齢が若返った

2018年、山下准教授は黒大豆種皮ポリフェノールの摂取が動脈年齢に与える影響をヒト試験で検証した。試験には、健康な男女22人(男性12人、女性10人、平均年齢46.7歳)が参加。22人は、通常のクッキーを渡す11人(男性6人・女性5人)と、20gの煎り黒大豆粉末が含まれるクッキーを渡す11人(男性6人・女性5人)に分けられた。試験参加者には4週間、好きなタイミングで毎日クッキーを食べてもらった。さらに、試験最終日から1ヵ月後、両群に渡すクッキーを入れ替えて同様の試験を行った。

動脈年齢は、各試験の開始前と終了後に加速度脈波計を用いて測定。通常のクッキーを食べた回と煎り黒大豆粉末が含まれるクッキーを食べた回に分け、それぞれの試験開始前後の動脈年齢の平均値を算出した。

算出された平均値を見ると、動脈年齢は通常のクッキーを食べてもらった期間は変化しなかったのに対し、煎り黒大豆粉末入りクッキーを食べてもらった期間は、動脈年齢が約3歳若返っていることがわかった。山下准教授によると、「各回の終了後に、参加者の血液や尿を調べたところ、煎り黒大豆粉末入り小麦粉クッキーを食べてもらったときには黒大豆種皮ポリフェノールが検出された。効率よく吸収されて体内を循環した黒大豆種皮ポリフェノールが、血管の抗酸化能を高めていると考えられる」とのことだ。

山下准教授は今後、兵庫丹波黒の種皮ポリフェノールの機能性を調べていく方針だ。「2019年以降、神戸大学医学部と情報交換をしている。地元の特産品が機能性表示食品として認められるように、ヒト試験も実施していきたい」と山下准教授は展望を語る。地域に根ざした機能性研究によって独自の魅力を明らかにすることが、長期的なブランド力強化につながるはずだ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。