天草産モリンガGABA、機能性表示食品発売!休耕地の有効活用でバージンモリンガ生産拡大へ 崇城大

地域発

モリンガを主原料とする熊本発の機能性表示食品が10月に発売された。崇城大学、天草モリンガファーム(熊本県上天草市、四方田徹社長)、熊本県産業技術センターからなる産学官連携プロジェクトの成果で、葉に含まれる「GABA」によるストレス緩和や高血圧改善効果の表示が可能となった。天草では、休耕地を活用しながらモリンガの生産量を増やしていく方針だ。

モリンガは、インド地方原産のワサビノキ科の植物で、海外では「ミラクルツリー(奇跡の木)」と呼ばれるスーパーフードとして知られており、2007年には国連の世界食糧計画にも採用された。モリンガの葉には、ビタミン・ミネラル・アミノ酸など、90種類以上の食品成分がバランスよく含まれている。

スーパーフードとしても知られているモリンガ。天草では2005年から栽培されている

「日本では熊本や鹿児島、沖縄で栽培されている。天草では、2005年から天草モリンガファームを中心に、モリンガの無農薬栽培に取り組んできた。モリンガ茶やサプリメントに加えて、モリンガオイルやモリンガせっけんなどが、これまでに商品化されている。毎年8月に開催されるモリンガ収穫祭には、県外から天草を訪ねてくるファンも少なくない」と話すのが、モリンガの機能性解析と有効成分の同定を進めてきた崇城大学応用生物工学科の西園祥子准教授だ。

崇城大学に事務局のある「バイオテクノロジー研究推進会」の人材育成プログラムをきっかけに、西園准教授らは2016年以降、モリンガの葉を原料とする機能性表示食品の開発を産学官連携で進めてきた。

天草では、モリンガの植え替えが毎年行われている。天草モリンガ ファームでは、収穫した初摘みの葉のみを当日に乾燥させて粉末にすることで、ほかにはない“バージンモリンガ”を商品化してきた。「収穫してからすぐに乾燥させることで、風味や成分が変化しないように加工されている。海外産モリンガとの差別化を図れる」と、西園准教授は話す。

“モリンガ収穫祭”には県外から天草を訪ねてくるファンも少なくないとのこと

西園准教授が成分分析を行なったところ、天草産モリンガの葉には、100gあたり278mgのGABAが含まれることが明らかになった。さらに、海外産よりも抗酸化力が強いこともわかっているそうだ。西園准教授によると、「抗酸化作用をもたらす成分の特定は現在も進めている。天草産モリンガ独自の成分や健康機能性が見つかる可能性もあるが、先行してGABAを主成分とするストレスの緩和や高血圧の改善効果を謳った商品開発を進めることになった」とのことだ。

中小企業にとって、不慣れな機能性表示食品の商品化は容易ではない。「機能性表示食品の設計や届出書類作成、機能性評価や人材不足など、企業ごとに商品化の課題は異なる。それぞれの企業にとって必要なサポートを大学が行うことで、迅速な商品化が可能となる。また、地域の農産品を活用した商品開発を行う場合は、自治体などの企業支援も重要だ」と、西園准教授は産学官連携の意義を強調する。

崇城大学、天草モリンガファーム、熊本県産業技術センターの産学官連携プロジェクトで開発された「モリンガGABA」

今年8月に届出が受理された「モリンガGABA」は、熊本産農産物を主原料とした初の機能性表示食品となった。茶のように飲むほか、ヨーグルトやアイスクリームに振りかけて食べるのもおすすめとのことだ。なお、西園准教授は天草産モリンガの分析を今後も進めていく。

現在、天草では休耕地を活用してモリンガの生産拡大を計画している。商品や原料の安定供給のほか、モリンガの栽培や加工に“複業”として地域住民が加わる新たな産業としての定着を目指す。「食」「観光」の組み合わせで、モリンガ収穫祭が熊本観光のコンテンツの一つに成長することも期待されている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。