大豆イソフラボン、慢性閉塞性肺疾患“COPD”の抑制効果確認!日本食の再評価後押し 大阪市大

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2019年8月、大阪市立大学医学研究科の浅井一久准教授らの研究グループは、大豆に含まれるイソフラボンの慢性閉塞性肺疾患(COPD)抑制効果を発表した。大豆消費とCOPDの罹患率が反比例することが指摘されており、今回発表された研究成果では、イソフラボンがCOPDを抑制するメカニズムが明らかになった。COPDは予防が重要な病気で、日本食の再評価を後押しする可能性もある。

リンク:大豆を食べると肺気腫を防げる?(大阪市立大学)

COPDは、WHOが世界の死因第3位に挙げている疾患だ。日本でもCOPDによる死亡者は年間2万人近くに上っており、40歳以上の罹患率は8.6%となっている。主因は喫煙だが、大豆の消費量が多い場合、COPDの罹患率が低いことがわかっている。日本では、古くから豆腐・納豆・醤油・味噌など大豆加工食品は身近なもので、24道県において1,000㌶以上の規模で大豆は栽培されている。

大豆をたくさん食べる人のCOPD罹患率は低いことがわかっていたとのこと

大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学教室では、運動がCOPDを抑制するメカニズムの解明に取り組んできた。「運動で抗酸化能を向上させると、COPDの抑制につながることが私たちの研究で明らかになりつつある。食事で抗酸化能を高めることも、COPD抑制につながると考えた」と、浅井一久准教授は研究の経緯を語っている。抗酸化能を高める食材として選ばれたのが、抗酸化成分のイソフラボンを豊富に含む大豆だった。

大豆摂取によるCOPD抑制効果は、マウスを用いた動物実験で検証された。マウスは、大豆摂取・喫煙群(8匹)と通常エサ摂取・喫煙群(8匹)のほか、大豆摂取・非喫煙群(10匹)と通常エサ摂取・非喫煙群(7匹)の合計4群に分類。大豆摂取群のエサには、エサ総重量の0.6%の大豆由来イソフラボンを加え、喫煙群のマウスは毎日1日60分間、タール量28mgのタバコの煙にさらされた。

実験装置でCOPDの予防効果を検証(浅井准教授提供)

実験は、マウスが自由にエサを食べられる環境で12週間行われた。肺組織内の炎症を示す肺胞内の白血球数と、COPDを引き起こす肺気腫の程度を示す肺胞の大きさを実験終了後に測定した結果、大豆摂取・喫煙群のマウスは、肺胞内の白血球数が通常エサ摂取・喫煙群マウスよりも有意に低く、肺胞の大きさは、非喫煙群のマウスと同程度だった。

COPDの気道炎症の中心をなす好中球炎症がイソフラボン投与で抑制された(浅井准教授提供)

浅井准教授によると、「大豆由来イソフラボンを摂取した喫煙群マウスの肺組織内では、肺炎を誘導するたんぱく質が、通常のエサを摂取した喫煙群マウスに比べて少ないこともわかった」とのことだ。未解明だった大豆摂取とCOPD抑制効果のメカニズムが明らかになりつつある。

COPDの治療には気管支拡張剤が用いられているが、根本治療ではなく、効果は限定的とされている。COPDの予防が重視される所以だ。「今回の研究で、食事によってCOPDを抑制できる可能性が示された。今後、大豆以外の抗酸化能を高める食材でも効果を検証していく」と、浅井准教授は研究の展望を語る。

COPDによる日本の経済損失は、年間2,000億円を超えるとされる。COPDの罹患率は高齢になるほど高くなり、高齢化が進展する日本の社会問題になっている。一方、「日本食」は、日本人の長寿に貢献していることを理由の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。大豆など日本食に欠かせない食材の健康エビデンス研究は、日本食の価値を見直す機運の高まりを後押しする可能性を秘めている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。