オリーブ植栽110周年の小豆島 オリーブオイル採油最盛期の東洋オリーブ訪問、ポマス活用法も確立

地域発

日本におけるオリーブ栽培発祥の地・香川県小豆島。オリーブ植栽110周年を迎えた現在も、国産オリーブの生産量日本一を誇る。新漬けオリーブやオリーブオイルは、小豆島を代表する特産品の一つだ。オリーブオイル採油の最盛期である11月、小豆島を訪ねた。

道の駅小豆島オリーブ公園にあるギリシャ風車にて

モクセイ科の常緑小高木のオリーブは、県花・県木に指定されている香川県を象徴する植物だ。県章にもオリーブの葉が採用されるなど、香川県でオリーブは特別な存在となっている。

小豆島でオリーブが植栽されるようになったのは1908年、いまから110年前のことだ。香川県のほかにも、同じ時期に三重県、鹿児島県でオリーブの栽培試験が開始されたが、産地として定着したのは小豆島だけだった。小豆島の気候風土がオリーブの栽培に適していたといわれている。国産オリーブの出荷量は、小豆島を中心とする香川県で約97%を占める。

東洋オリーブ社にあるオリーブの木

「気候だけではなく、生産者の努力が大きかったのだろう。弊社には現在、約18000本のオリーブの木がある。25㌶程度の面積になる。昔から変わらず、脚立に乗って手摘みで1粒ずつ果実を収穫していく。傷つけないように果実を集め、質のいいオリーブオイルを搾るためだ」と案内してくれたのが、東洋オリーブ(香川県小豆島町、南安子社長)広報部の佐々木貴宏さんだ。同社は小豆島最大のオリーブ製品メーカーで、1日に最大6㌧の果実からオイルを採油できる最新の設備を持っている。

オリーブの果実に傷をつけぬよう、1粒ずつ手摘みで収穫されているそう。脚立に乗ってオリーブの果実を取ってみたが大変な作業だ

小豆島を代表するオリーブには、「ミッション」「ルッカ」「マンザニロ」「ネバティロブランコ」という主要4品種があるという。この日(11月15日)は、ミッションとルッカが採油される予定となっていた。

オリーブの果実は、「果肉」「果汁」「オイル」に分けられる。洗浄・粉砕した果実を攪拌器で十分に練った後、遠心分離にかけてオイルを抽出していく、というのがオリーブオイルの基本的な製法だ。東洋オリーブではこの時期、多い日で1日に約3㌧の果実からおおよそ300㌔のオリーブオイルが作られているという。

搾った種子から得られる植物油とは異なり、果実由来のオリーブオイルには「ポリフェノール」や「オレイン酸」が豊富に含まれている。オリーブオイルが体にいい油といわれるゆえんである。

味を意識してオリーブオイルを“飲んだこと”はない。カップに入った搾りたてのオイルを両手の手のひらで包んで軽く温めてから口に入れると、苦味とピリッとした辛味があることがわかった。「この味の正体が抗酸化作用のあるポリフェノールだ。国際的には、苦味と辛味の度合いがオリーブオイルの品質を決める要素となっている。小豆島産オリーブオイルの評価も高まりつつある」と佐々木さんは解説する。

“できたて”のオリーブオイル。左手の手のひらにカップを乗せ、右手の手のひらでカップを覆うようにしてオイルを温めてから試飲するのが作法とのこと

新漬けオリーブやオリーブオイルのほかにも、東洋オリーブでは、オリーブ果実エキスなどを活用した化粧品の製造にも力を入れている。1粒ずつ手摘みされた果実には、もはや捨てるところはない。注目の取り組みの一つが“廃材の有効活用”だ。採油の後、廃棄されてきた「ポマス」と呼ばれる搾りかすの新たな用途も確立されつつある。

東洋オリーブで開発されている商品。オリーブ化粧品も人気だそう

「内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」「文科省革新的イノベーション創出プログラム(COI)」における日本製粉と兵庫県立大学、筑波大学による共同研究では、ポマスに含まれるマスリン酸に関節の痛みを和らげる働きや、骨格筋量を増加させる働きがあることがわかってきた。

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オリーブの高次利用について佐々木さんは、「ポマスを乾燥させた飼料を食べて育ったオリーブ牛の認知も上がりつつある。生産者らが香川牛のブランド化のために推進してきたものだが、産学研究の報告を見ていると肉の質や味の改善に繋がっていたのかもしれない」と話す。

“搾りかす”とはもう呼べない……。産学研究で関節の痛みを和らげる働きや骨格筋量を増加させる働きがあることがわかってきた

静岡県や鹿児島県などでもオリーブ栽培が進められる中、品質のさらなる向上や新商品の開発、健康効果の解明など、オリーブ王国・小豆島の今後の取り組みに対する期待は大きくなるばかりだ。東洋オリーブを案内してくれた佐々木さんは、「オリーブオイルの国際コンクールでの上位定着を狙っていく」と、最後に力強く話してくれた。

東洋オリーブ社内には売店が併設されている。同社で加工された旬のオリーブ商品を手にすることができる。近くにはエンジェルロードや小豆島オリーブ公園もあり、小豆島観光の立ち寄りスポットとしてもおすすめだ。

小豆島人気の観光スポット、エンジェルロード。潮の満ち干きによって島に続く道が現れたり消えたりする
日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。