海藻成分がナトリウムをキャッチして体外に排出 排塩サプリ、熊本大学と共同開発

大学発

医療用品開発ベンチャーのトイメディカル(熊本市、竹下英徳社長)と熊本大学大学院生命科学研究部の藤原章雄講師は共同で、食事由来の塩分を吸着・排出するサプリメントを開発した。

塩分過多は、脳卒中や心臓病を引き起こす動脈硬化の原因となる高血圧の引き金の一つとして知られている。“塩分を出す”という明確なコンセプトのもと、「Del Salt(デルソル)」と名づけられたサプリメントの主成分は、海藻に含まれる食物繊維のアルギン酸塩だ。アルギン酸塩は、全長50㍍以上になり、世界最長の海藻といわれるコンブの仲間の「ジャイアントケルプ(オオウキモ)」から抽出されている。藤原講師が素材を探索していった末にたどり着いた。

ジャイアントケルプから抽出したアルギン酸塩を主成分とするサプリメント

アルギン酸塩と食事に含まれる塩分(ナトリウムイオン)が胃液中で接触するとイオン交換反応が起こり、アルギン酸ナトリウムというゲルができる。ゲルは消化酵素によって分解されることなく腸まで運ばれ、便といっしょに体外に排出される。その結果、体内に吸収される塩分が減り、血中塩分濃度も低下するというしくみだ。

血液中の塩分濃度と血圧には、相関関係があるという報告もある。簡単にいうと、血中塩分濃度に伴い血圧は上昇することを意味する。高血圧の改善の一歩は、体内に取り込まれる塩分濃度を下げることといえるわけだ。

マウスを対象に藤原講師が実施した試験では、食塩水を飲ませる前にデルソルを投与することで血中塩分濃度の上昇が抑制されることが確認された。デルソルを投与することで、マウスの糞中に含まれる塩分の量が多くなることもわかった。胃の中で吸着した塩分が体外に排出されていることを示す結果だ。

ヒトを対象にした試験も実施された。デルソルの有無によって血中塩分濃度が変化するか調べるもので、試験にはトイメディカル社内から30~40歳代の11人が参加した。摂取する塩分量の違いで結果に差が出ないように、試験時の食事にはインスタント食品を採用した。

食前にデルソル(4粒・1㌘)を飲んでからインスタント食品を食べたときは、インスタント食品だけを食べたときよりも血中塩分濃度の上昇が低く抑えられていた。統計的に意味のある違いを指す有意差も認められている。

デルソルを飲んだときとプラセボを飲んだときの血中塩分濃度を測定する試験でも、効果は明らかだった。試験に参加した16人がプラセボを飲んだときは、食後60分までに血中塩分濃度が急上昇したのに対し、デルソルを飲んだときは緩やかな上昇に止まった。藤原講師によると、「血液中の塩分濃度の急上昇を抑えることは、特に塩分感受性の高い高血圧患者にとってメリットが大きいといえるだろう」とのことだ。

デルソルには、カリウムが含まれていないのもポイントだ。「カリウム摂取を制限されている腎不全患者、透析患者も飲むことができる」と藤原講師は解説する。

トイメディカル社は今後、さらなるエビデンスを蓄積しながら、ドラッグストアなどを中心に販路開拓にも力を入れていく方針だ。厳しい塩分制限のある腎臓病患者が、デルソルを取り入れることで“少しだけ多くの塩味”を楽しめるようになる日がくるかもしれない。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。