手づくり化粧水で美白 前橋工科大、ウメ抽出液のチロシナーゼ活性阻害効果を確認

地域発

群馬県のウメの生産量が和歌山県に次いで全国2位であることは、意外と知られていない。前橋工科大学で、群馬県産ウメを活用した化粧水開発や機能性の評価を続けてきた結果、ウメ抽出液に美白効果があることがわかってきた。

研究の中心人物は、前橋工科大学工学部(生物工学科食品機能開発工学分野)の本間知夫教授だ。2010年に前橋工科大学教授に着任した本間教授は、「群馬県は全国2位のウメの生産量ではあるが、収穫量と作付面積はいずれも減少が続いていた。地元素材の機能性を評価していく必要があると考えていた」と研究の意図を振り返る。

本間教授が参考にしたのが、ウメの生産量1位の和歌山県の家庭で作られている自家製化粧水だった。「ウメ化粧水には美白効果がある」と和歌山に住む知人から教わったのが、研究のきっかけになったという。

高崎市箕郷町のウメ農家から、「白加賀」「南高梅」「紅養老」という3品種の青梅を提供してもらうと、ホワイトリカー1.8㍑(35%アルコール)にそれぞれ約1㌔の果実を漬け込んだ。3ヵ月後、5ヵ月後に果実を取り出した後、ろ過して得られた液体が「ウメ抽出液」だ。

「知人からウメ抽出液と精製水を5:4の割合で混合して自家製化粧水を作っている」と聞いた本間教授。これに倣い、蒸留水で5:4に希釈した液を「ウメ希釈液」として実験を行った。

実験では、シミの原因となるメラニンの合成酵素として知られる「チロシナーゼ」に対する活性の阻害の有無と阻害率を測定した。その結果、ウメ抽出液とウメ希釈液はいずれも、60~90%と高い阻害率を示した。本間教授によると「熱処理やpH調製によって効果は変化しなかった。ウメには有機酸が多く含まれるが、約0.15%というウメ抽出液中の酸濃度と同じクエン酸溶液は、美白効果を示さなかった」とのことだ。

品種差を比較すると、チロシナーゼ活性阻害効果は、紅養老、白加賀、南高梅の順で高くなり、6月中旬~下旬に収穫した青梅から得られた抽出液で美白効果が高くなることがわかった。一方で、ホワイトリカーに漬け込む期間が長くなると、美白効果が減少することも確認された。

「品種や収穫時期、抽出方法などによる美白効果の違いが明らかになれば、商品開発のヒントにもなるだろう」と、本間教授は実験の成果を解説する。今後はウメ抽出液中の有効成分の特定を進めるとともに、青梅ではなく廃棄されているウメ果実や種子の利用法、ウメ抽出液の新たな機能性などを模索していく。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。