干しダイコンづくり最盛期 GABAリッチな宮崎県産たくあん、高血圧改善に有効か

地域発

たくあんの日常的な摂取で、高血圧が改善するかもしれない。宮崎県、宮崎大学、宮崎県内12の企業で構成される宮崎県干したくあん・漬物研究会は、たくあんの血圧低下作用を発表した。ダイコンを天日干しすることで増えるアミノ酸の一種「GABA(γ‐アミノ酪酸)」の働きによることがわかってきた。

干したくあんの生産量日本一を誇る宮崎県では現在、原料となる干しダイコンづくりが最盛期を迎えている。高さ約6mのやぐらにダイコンが整然と吊るされる光景は、宮崎の冬の風物詩として知られている。

漬物には塩分が多く含まれるイメージがある。宮崎県産干したくあんは、冷蔵保存による製法にシフトした結果、塩分濃度は3.0%まで減少した。一方で、血圧低下作用などが認められているGABAは、2週間の天日乾燥で約7倍に増加することがわかった。厚さ3mm、直径3cmの下漬け干したくあん10gで、GABAリッチな食品として知られる発芽玄米100gと同量のGABAを摂取することができる。

干したくあん加工のようす。道本食品(宮崎市)提供

宮崎県干したくあん・漬物研究会、宮崎県食品開発センター、宮崎大学農学部応用生物科学科の窄野昌信教授と榊原啓之教授による産学官で推進されてきた今回のプロジェクトでは、ヒト介入試験も実施された。

重篤な病気にかかっていない21人のボランティアを、干したくあん25g(GABA含有量約26mg)を摂取する群と、GABAがほとんど含まれていないたくあんを摂取する群の2群にわけて、血圧の推移を測定した。2群ともに8週間、たくあんを毎朝食べつづけた結果、有意差は確認されていないものの、干したくあん群は摂取前と比較して、収縮期、拡張期の血圧がそれぞれ5.2%、5.4%低下していた。

宮崎県では、たくあん用の生ダイコンの栽培が1960年ごろから始まった。火山灰成分が多く保水力の高い「黒ボク土」で育ち、旬を迎える冬季には「霧島おろし」と呼ばれる乾いた西風が吹くため、宮崎県は干しダイコンづくりに適しているといわれてきた歴史がある。今回のプロジェクトでは、天日干しを経た加工による“機能性”という強みが明らかとなった。

宮崎県商工観光労働部の柚木崎千鶴子さんは、「このように大規模にダイコンを天日乾燥する方法は、全国でも宮崎、鹿児島でしか行われていません。その中でも宮崎の干しダイコン生産量は日本一です。GABAの効果に加えて一口30回のそしゃく効果もばっちりで、しかもおいしい宮崎の干したくあん。県産品としてのブランド化を目指し、今後も味の向上とともに、機能性のさらなる研究を進めていきたい」と話している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。