大宜味村で国産ウナギの完全養殖を 2018年1月にはウナギの卵のサプリお披露目

地域発

ウナギの完全養殖に向けた基礎研究を行っている伊藤沖縄奇跡の森研究所(千葉県柏市)は、研究の過程で取れる卵を使ったサプリメントの開発に成功した。ウナギの卵を使ったサプリメントは世界初。2018年1月末から沖縄県で試験販売を開始する予定となっている。沖縄県大宜味村には養鰻のための研究施設も設立され、健康長寿の村の新たな名産品としてウナギをPRしていく考えだ。

2017年12月5日、早稲田大学日本橋キャンパスで開催された記者発表には、伊藤沖縄奇跡の森研究所の伊藤周治社長と共同研究者の早稲田大学の矢澤一良教授、大宜味村の宮城功光村長とサプリメントの販売支援を行うフードリボン(千葉県柏市)の宇田悦子社長が出席した。

早稲田大学日本橋キャンパスで開かれたプロジェクトの説明会

伊藤氏と矢澤教授は、天然ウナギと同じ10ヵ月の排卵期間で養殖ウナギから健康な卵を得ることに成功した。排卵期間の10ヵ月というのは、メスウナギが川から下りてから産卵場所であるマリアナ海溝にたどり着くまでの期間とされる。

2011年5月にマリアナ海溝で初めて確認された天然ウナギの卵の大きさは直径1.6mm。これまでの研究では、2~3ヵ月で卵が成熟し、大きさも1mm以下にとどまっていた。1mm以下の小さな卵では、孵化した幼魚がシラスウナギまで生き残る確率は低いと考えられている。

伊藤氏らの長年の研究によって、十分な時間かけて卵を成長させることができるようになった。「これまで卵が小さいことが完全養殖の壁となっていた。健康なメスウナギの腹の中に長くいた卵なら、幼魚の生存率が上がると考えられる」と伊藤氏は話す。同社は、ホルモン剤を使用せずにメスウナギを確保する技術をすでに確立しており、ウナギの完全養殖に向けた研究が加速することが期待される。

ウナギはスタミナ食品として認知されている。今回の研究では、卵の機能性も世界で初めて明らかにされた。城西大学と伊藤氏らの研究グループが行った試験では、体脂肪減少効果のある「アディプシン」のほか、生体防御作用を高める「メタロチオネイン」の遺伝子発現を高める働きがあることが確認された。その後、岐阜薬科大学や早稲田大学にて研究を発展させている。

矢澤教授によると、「元気な卵は完全養殖の研究に、それ以外のものは卵のサプリメントとして活用していく」とのこと。今後は大宜味村の養鰻研究施設で、卵から孵化したウナギの幼魚をシラスウナギまで育てる研究を進め、資源量が急減して絶滅危惧種にも指定されている二ホンウナギの完全養殖の実現を目指す。

サプリメントは2018年1月末の試験販売後、同年3月から本格販売に乗り出す。沖縄県内企業の協力のもと、空港や国際通り、サービスエリアや道の駅に出荷する。インバウンドメディアとも提携し、訪日外国人へのPR、中国、台湾を中心とした輸出も視野に入れている。

現在、事業拡大に向け、金融機関を通してプロジェクトの支援者を募っている。事業計画については、年内に開催される説明会で改めて発表される予定だ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。