規格外の二十世紀梨から生まれた健康成分 炎症性腸疾患に有効か

青梨の代表品種として知られる二十世紀梨。生産量が最も多いのは鳥取県だ。上品な甘さとさわやかな味わいが人気で、最高級品の梨として海外にも輸出されている。今回、鳥取発の新名物「梨酢」の研究をご紹介したい。

鳥取県で年間9,000トン収穫される二十世紀梨のうち、およそ10%が規格外として廃棄されていた。肥料として利用されるケースがある一方で、岡山県の焼却場まで運んで処分することも多かったという。もったいない――廃棄されている規格外の梨をなんとかしようと、地元の生産者と斎本博之先生を中心とする鳥取大学大学院工学研究科は共同研究を続けてきた。リンゴやブドウなど果実酢を手本にして生まれたのが梨酢だった。

昔ながらの製法で醸造される梨酢には、「ガラクツロン酸」という成分が豊富に含まれている。二十世紀梨に含まれるペクチンという成分が、梨酢を作る過程で分解されてできることがわかってきた。ほかの果実酢にはほとんど含まれていない”梨酢だけ”の成分とのことだ。

鳥取大学農学部の東和生先生の研究グループは、炎症を抑える働きがあるガラクツロン酸に目をつけた。潰瘍性大腸炎の改善に梨酢が役立つという仮説のもと、マウスを使った実験に着手。潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に炎症が生じる病気だ。下痢や血便が起こり、重症になると発熱や体重減少、貧血などの症状が現れる。潰瘍性大腸炎は欧米で多い病気として知られていたが、近年は日本でも患者数が増加している。

東先生は潰瘍性大腸炎のマウスを「梨酢を含んだ水溶液を与えて飼育する群」「ほかの果実酢を含んだ水溶液を与えて飼育する群」「果実酢を含まない水溶液を与えて飼育する群」という3つのグループにわけて、実験を行った。6日後に潰瘍性大腸炎の病状を確認した結果、梨酢を飲ませたグループでは大腸内のただれが改善していることがわかった。炎症に伴い高い値を示すインタ―ロイキン‐6というサイトカインも、ほかの果実酢を飲んでいたマウスに比べて梨酢を飲んでいたマウスが低い数値を示した。マウスが実験で飲んでいいた梨酢の量を私たち人間の必要量に換算すると、1日約150㍉㍑程度になる。効率的に取れるようにできるかが課題だ。

まろやかな味わいの梨酢は、ほかの果実酢と同じように水やお湯などで割って飲むことができる。東先生のおすすめは牛乳割りとのこと。酸味が適度に抑えられ、飲みやすくなるという。加熱によって有効成分が変質することはないので、料理酢として使用することもできる。梨酢は気軽に食生活に取り入れることができる健康食品といえるだろう。

 

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