ポポー種子エキスの抗腫瘍効果を確認!新潟発の新たな果実酒や機能性食品の開発目指す 新潟県大

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新潟県立大学の神山研究室では、ポポーという果実の機能性について研究している。2019年3月には、ポポー種子抽出物のヒト由来肺腺ガン細胞増殖抑制効果が報告された。劣化が早く、果実として出荷できる商圏が限られる中、機能性食品の開発も視野に入れながら、さらなる研究が進められている。

“幻のフルーツ”と呼ばれるポポーは、バンレイシ科に属する北アメリカ東部原産の果実。明治30年ごろに日本に伝わり、昭和初期にはブームとなったものの、人気は徐々に衰退していった。国内では現在、山形県や新潟県などの一部地域で栽培されている。近年、アイスクリームやジェラートといった加工品が販売されるなど、再ブームの兆しがある。クリーム状の果肉は甘みと香りが強くフルーティで、熱烈な愛好者から支持されている。

神山研究室ではポポーの機能性について研究している

機能性研究という切り口でポポーの再活性化や新商品の開発を後押ししているのが、新潟県立大学人間生活学部の神山研究室だ。「ポポーの種子に含まれているアセトゲニンの抗腫瘍作用に注目している」と話す神山伸教授は、新潟県内の朝市で偶然見かけたポポーに興味を持った。2016年のことだ。アセトゲニンはバンレイシ科の植物の種子に豊富に含まれる生理活性物質で、抗酸化作用や抗腫瘍作用などがあると報告されている。

食品中の抗腫瘍活性成分について研究している神山研究室は、国産ポポー種子の抗腫瘍活性の検証を進めていった。細胞培養プレートに広げられたヒト由来肺腺ガン細胞2000個に、ポポー種子抽出物が含まれる溶液を添加して4日間培養した後、増殖した生細胞数を測定するという内容だ。実験では濃度ごとの効果を比較するために、1mlあたり0.1、1、10μgのポポー種子抽出物を配合した溶液が用いられた。なお、生細胞数は細胞増殖アッセイという方法で測定された。

実験の結果、すべての濃度の溶液において、ヒト肺腺ガン細胞の増殖が止まっていることが確認された。神山教授によると、「ガン細胞の増殖を50%抑制できるポポー種子抽出物の量は、1mlあたりわずか0.00034μgであり、少量のポポー種子抽出物でも抗腫瘍活性が得られる」とのことだ。

国産ポポー種子のアポトーシス誘導作用についても検証された。1mlあたり1μg、10μgのポポー種子抽出物が配合された溶液を、それぞれヒト肺腺ガン細胞100000個に添加して24時間培養した後、細胞を染色して生細胞と死細胞の数を測定した。

その結果、溶液1mlに1μgの濃度では死細胞の割合は27.5%で、10μgでは90.5%と、高濃度のポポー種子抽出物ではアポトーシス誘導作用が増すという結果が得られた。顕微鏡で詳細を確認したところ、ガン細胞がプレート底面からはがれて白く見える状況も確認された。「ポポー種子抽出液によってアポトーシスが誘導された結果」と神山教授は解説する。

ポポー種子抽出物がヒト肺腺ガン細胞の増殖を抑制(神山教授提供)

神山教授は、香りのいいポポーは果実酒に最適であると考えている。「ポポーの香りの主成分は吟醸酒と同様、カプロン酸エチル。今回の実験ではメタノールで有効成分を抽出したが、アルコールで有効成分が抽出できるため、ポポーを漬け込んだ日本酒などは新たな特産品の候補となる。今後、種子を含むポポー酒に含まれるアセトゲニンの量を調べていく」と、神山教授は次の展開を見据えている。

品質の劣化が早いポポーは、フルーツとして全国に販路を拡大するのが難しいという制約がある。また、種子が多くて食べづらいという欠点も抱えている。種子を含む果実の健康機能性の解明が進めば、加工品原料としての利用にはずみがつくはずだ。海外では、バンレイシ科の果実の抗酸化作用や高血圧改善作用なども報告されており、すでにサプリメント原料としても活用されている。「幻の果実」は、健康の維持・増進に役立つ定番となる可能性を秘めている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。