嬉野産エキナセア、豊富なポリフェノールを含む茶の開発へ!増加する耕作放棄地での栽培拡大も期待

地域発

佐賀県嬉野市では、エキナセアというハーブの特産化を進めている。嬉野産エキナセアには、ポリフェノールの一種である「チコリ酸」が海外産エキナセアよりも多く含まれており、活性酸素消去能が強いことが確認された。西九州大学の安田みどり教授と佐賀緑健(佐賀県嬉野市、太田重喜社長)は、ハーブティの開発を視野に入れて奔走中だ。エキナセアの生産・消費の拡大は、耕作放棄地活用の一手としても期待されている。

佐賀県の南西部に位置する嬉野市は、日本における良質な緑茶生産地の一つとして知られている。2008年には、「うれしの茶」が特許庁の地域団体商標に登録された。しかし、緑茶市場は厳しい状況に置かれている。ペットボトル飲料による茶の消費が進み、茶葉の販売量は減少している。また、緑茶農家の高齢化に伴い、後継者のいない茶畑の耕作放棄も増加中だ。耕作放棄地を活かした新たな産業の創出が各地で求められている。

佐賀県嬉野市ではエキナセアの栽培が進められている

嬉野市におけるエキナセア茶の商業栽培を提案したのが、佐賀緑健とうれしの紅茶振興協議会(佐賀県嬉野市、太田裕介会長)から耕作放棄地の活用について相談を受けた西九州大大学健康栄養学部の安田みどり教授だった。エキナセアは“インディアン・ハーブ”と呼ばれる北米原産キク科の多年草で、海外では茶や薬用ハーブとして流通している。嬉野市の一部地域では、きれいな花を咲かせるエキナセアが観光振興を目的として栽培されていた。

「エキナセアについて調べていくと、抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、免疫賦活作用など、数多くの健康機能性が報告されていることがわかった。収穫や加工に緑茶の機械を転用できるので、嬉野市の新たな特産品になり得ると考えた」と話すのが、安田教授だ。特に興味深かったと安田教授が振り返るのが、強い活性酸素消去能のあるチコリ酸というポリフェノールだった。

2015年、安田教授は佐賀緑健と共同で、嬉野産エキナセア茶の特性の検証に乗り出した。比較対象として、国内における流通量が多いドイツ酸エキナセア茶葉と中国産エキナセア茶葉が用意された。なお、嬉野産エキナセア茶は緑茶の製法で加工された。それぞれの茶葉1.5g を150ml・98℃の熱水で5分間かけて3回抽出。その後、2回ろ過した茶の総ポリフェノール含量・チコリ酸含量・活性酸素消去機能を測定した。

左上が嬉野産、右上がドイツ産、下が中国産のエキナセア

成分分析の結果、嬉野産エキナセア茶葉抽出液には、ドイツ産や中国産のエキナセア茶葉抽出液の3倍となる総ポリフェノールが含まれていることがわかった。そのうち、嬉野産茶葉抽出液中のチコリ酸はドイツ産の8倍、中国産の3倍の量だった。嬉野産茶葉抽出液の活性酸素消去機能がドイツ産、中国産よりも有意に高いという結果も得られている。

安田教授によると、「嬉野産エキナセア茶葉抽出液が顕著な活性酸素消去機能を示したのは、チコリ酸によるものと考えている。ポリフェノールが多いため渋味を懸念していたが、味の問題もなさそうだ。20代の女子大学生49名による官能評価では、渋味の差異は認められなかった」とのことだ。その後、安田教授のゼミの学生によって試作品のエキナセア茶が開発された。定番商品にしていくためには、企業の継続的な後押しも必要となる。

抗酸化作用の強い嬉野産エキナセア茶の商品開発にも挑戦

観光振興を目的として、嬉野市で栽培されていたエキナセア。ピンク色の花が美観形成に役立つとされ、埼玉県寄居町や鳥取県大山町でも特産化が検討されている。エキナセアの収穫期は緑茶と異なるため、農家の負担集中を避けつつ所得の向上を目指すことが可能だ。エキナセアの生産拡大を担う健康機能性研究は、茶畑を中心とした経済圏復興の可能性を秘めている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。