兵庫県花“ノジギク”から菊花茶開発 豊富なポリフェノール、抗酸化作用・抗アレルギー作用期待

地域発

兵庫県の県花であるノジギク(野路菊)。同県工業技術センター(神戸市)では、身近にあるノジギクの食品利用について研究を進めてきた。健康志向の高まりを受け、生活習慣病やアレルギーの予防・改善に役立つ“新たな地域特産品の開発”を目指して始まった取り組みだ。現在、ノジギク花頭を用いた菊花茶などが開発されている。

ノジギクは日本の固有品種のキク科の植物で、群生規模は兵庫県が日本一とされている。キク科の仲間にはレタスやシュンギクなどがあるが、ノジギクの食経験は乏しかった。姫路市大塩公民館ノジギク保存会から、ノジギクの食品利用について相談を受けたのが研究のきっかけとなった。

ノジギクの花。姫路市・のじぎくの開花情報より

「食用菊の花頭を煎じて飲む菊花は、中国最古の薬本『神農本草経』や明時代の『本草網目』に記載されている伝統的な生薬で、解熱や鎮痛、目のかすみや充血にいいとされている。一方、日本固有のキク科植物由来の菊花茶は意外にも知られていなかった。薬効や安全性を検証しながら、ノジギク茶開発の可能性を探ってきた」と話すのは、中心となって研究を推進してきた吉備国際大学農学部の井上守正教授(当時は兵庫県立工業センター環境バイオ部)だ。

地元・神戸大学の「知」も、ノジギクの研究を後押ししている。同大学で開発されたポリフェノールの一斉分析手法を用いて、井上教授らは兵庫県産植物の成分分析とライブラリー化を進めていった。その結果、ノジギク(姫路市大塩産)の花頭にはポリフェノール類が豊富に含まれていることがわかった。

ノジギクの群生規模は兵庫県が日本一。姫路市・のじぎくの開花情報より

井上教授によると、「ケルセチン配糖体、アピゲニン、ルテオリン配糖体、クロロゲン酸のほか、柑橘系果実に多く含まれるエリオジクチオール、エリオジクチオール配糖体が確認された。ノジギクの開花に伴い、含有量が増えていくこともわかった」とのこと。食用菊である「もってのほか」「黄菊」と比較すると、ノジギクにはよりバラエティーに富んだポリフェノールが含まれているそうだ。

ノジギクの成分が特定されると、機能性に関する研究が進められた。「脱顆粒の指標の一つである“β–ヘキソサミニダーゼ遊離阻害活性”を見たところ、中国菊花茶の杭白菊と同等の抗アレルギー作用が認められた。メラニン産生抑制機能も見出され、活性は杭白菊やジャーマンカモミールより高く、美白成分として知られるアルブチンに並ぶものだった」と解説する井上教授。一連の研究で、高濃度のグリシン、ヒスチジン、プロリンが抽出されることも明らかにしている。

ジャスミンやバラなどの花茶、カモミールや杭白菊菊花といった菊花茶に対し、食経験がなかったノジギク。安全性の検証などを重ねた後、ノジギク茶の試作品が開発された。動物実験では、体内におけるノジギクポリフェノールの抗酸化活性も示唆されているそうだ。

井上教授らが開発したノジギク茶

井上教授は、「マリーゴールドやカモミールなど、ほかのキク科植物にはフラバノン類は含まれない。主にフラバノン類にフォーカスしながら研究を進めてきたが、独自性のある菊花茶ができたのではないか」と研究成果を総括する。現在、兵庫県内のいくつかの企業や団体でノジギク茶は販売されている。身近にあった日本一。今後は地域産品としてのブランド化が課題となる。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。