花粉症のつらい症状の緩和に柑橘果皮ノビレチン ヨーグルトに混ぜれば効果アップ期待 愛媛大

地域発

柑橘類の生産量日本一を誇る愛媛県では、未利用資源である柑橘果皮の有効活用法を模索してきた。これまでの研究で、従来、“搾りかす”と呼ばれてきた果皮が、花粉症の症状緩和に役立つことが確認されている。花粉の飛散が気になるシーズン。天然の抗アレルギー素材について、愛媛大学の菅原卓也教授(大学院農学研究科生命機能学専攻)に話を聞いた。

愛媛県では現在、39種類の柑橘類(収穫品目)が栽培されている。柑橘類全体の生産量は年間21万㌧以上と日本一。愛媛県はいわずと知れた柑橘王国だ。ウンシュウミカンやイヨカン、ポンカンやデコポンなど、なじみのある柑橘類の多くは愛媛県から出荷されている。

「それぞれの品種は旬の時期に流通するほか、規格外の果実はジュースなどにも加工されているが、果汁を搾った後の残渣は廃棄されることも少なくなく、再利用の用途としては家畜のエサに限られていた。健康成分が豊富な残渣を有効活用できないものかと考えてきた」と話す菅原教授は、2014年から県内で生産されている柑橘類の果皮に多く含まれる「ノビレチン」という成分について研究を進めてきた。

ノビレチンはフラボノイドの一種で、炎症を抑える働きや血糖値の上昇を緩やかにする働きなどがある。最近の研究では、がんや認知症の予防効果があることも報告されている。機能性成分として注目されるノビレチン。菅原教授が研究してきたのが、抗アレルギー作用だ。

柑橘類の果皮に豊富に含まれるノビレチンの抗アレルギー作用について研究している

菅原教授が行なった試験や実験では、ノビレチンがアレルギーの改善に役立つことが証明されてきた。「ウンシュウミカン果皮由来ノビレチンがマスト細胞の脱顆粒を抑制することにより、アレルギー症状を緩和することを確認した。PI3Kの活性化抑制という、免疫細胞内におけるアレルギー(脱顆粒)応答の下方制御による効果であることもわかっている」と菅原教授は解説する。

ノビレチンと同様、脱顆粒抑制効果のある「β–ラクトグロブリン」という乳たんぱく質をいっしょに取ることで、抗アレルギー作用が高まることも明らかになってきた。スギ花粉症を誘発したマウスを使った実験では、ノビレチンとの同時摂取でくしゃみの回数が有意に減少するという結果が得られている。

ノビレチンとβ–ラクトグロブリンの同時摂取で効果が高まることがわかり研究室では商品開発にも挑戦

基礎的な検証を重ねた後、ヒト試験も実施された。菅原教授によると、「スギ花粉アレルギーの男性13人、女性13人を対象にウンシュウミカン果皮入りのヨーグルトを14日間食べてもらったところ、掻痒感、異物感、充血、痛みといった自覚症状の改善が認められた。結膜の表面温度が抑制されるという結果も確認されている」とのことだ。

一連の研究成果を受け、県内企業と開発された「N+ドリンクヨーグルト(飲むヨーグルト)」「N+アレルクレンズ(錠剤)」「N+健康習柑ピールdeゼリー(ゼリー)」をはじめ、ノビレチンとβ–ラクトグロブリンを同時に取れるN+シリーズが現在、10商品販売されている。今後も商品ラインナップは増えていく予定だ。

愛媛大学の菅原卓也教授の研究をもとに開発されたN+シリーズ

なお、愛媛県で生産されている柑橘類の中では、ポンカン果皮にノビレチンが豊富に含まれているとのこと。「柑橘類やヨーグルトなど、身近な食材を体質改善に役立ててほしい」と菅原教授は話している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。