抹茶の抗不安作用のメカニズムを確認 健康増進の新たなライフスタイルとして“安らぎの1杯”を 熊本大学

大学発

熊本大学の研究グループは、「抹茶」に不安を和らげる働きがあることや、そのメカニズムの一端を動物実験で明らかにした。研究成果は2019年6月、『Journal of Functional Foods誌』のオンライン版に掲載された。今後、産地による活性の違いなどを検証していく方針だ。

リンク:抹茶が不安を軽減するメカニズムの一端を解明

新芽が成長する4〜5 月に25日以上、茶園に遮光棚を設け、黒い寒冷紗でチャノキを覆う「棚式覆下栽培」という方法で栽培された後、乾燥茶葉を茶臼でひいて得られる微粉末の抹茶。日本では、数百年の歴史のある伝統的な嗜好品として愛されてきた。近年では、「Matcha」として訪日外国人をはじめ、海外でも人気となっている。

抹茶は茶道のほか、リラックス効果、美白効果、肥満予防効果など、さまざまな効果の期待される民間伝承薬としても扱われてきた。「医薬品のように使用されてきた歴史はあるものの、科学的根拠は十分ではない。研究テーマとしている不安や精神疾患に対する抹茶の機能性を検証してきた」と話すのが、論文投稿者である熊本大学大学院生命科学研究部の倉内祐樹助教(薬物活性学分野)だ。

抹茶の経口投与によってマウスの不安レベルが低下するという結果が得られた(倉内祐樹助教提供)

研究には、倉内助教の出身地・愛知県西尾市の抹茶が偶然にも使用されることとなった。「西尾の抹茶は、古くには京都の宇治に出荷されていた実績がある。2017年には“西尾の抹茶”として、GIと呼ばれる地理的表示保護制度にも愛知県で初めて登録された」と倉内助教が話すとおり、西尾市や西尾市に隣接する安城市で栽培されている抹茶は、同県を代表する“地域ブランド”の一つとなっている。

高架式十字迷路試験モニタリングのようす

倉内助教らの研究グループは、抗不安薬のスクリーニングのほか、不安に伴う実験動物の行動を評価する「高架式十字迷路試験」を実施した。移動距離や経路、滞在時間など、迷路のような仕切りが設けられた実験室内で、抹茶投与の有無によるマウスの行動の違いを評価するという内容だ。開放的な高所滞在時間や移動距離が長いほど、不安レベルは低いと評価される。

試験の結果、水のみを与えたマウスに対し、抹茶および抹茶抽出物を与えたマウスの不安行動は軽減されていることがわかった。抹茶の摂取量が増えるほど抗不安作用が高まる傾向も確認されている。

抹茶与えたマウスの不安行動が改善。量の多いほうが効果は高い傾向が見られた(倉内祐樹助教提供)

倉内助教は、「いくつかの条件で試験を行なったが、水に溶けにくい成分が出てくる80%エタノール抽出物に強い抗不安活性があることを見出した。作用機序を検証したところ、神経伝達物質と結合するドーパミンD1受容体、セロトニン5-HT1A受容体の活性化を介した機序の関与が認められた」と解説する。これらの活性を促す医薬品は、治療の現場で抗不安薬として使用されている。

今回、抹茶の80%エタノール抽出物から最も強い抗不安作用が得られる結果となったが、水や熱水によって抽出した抹茶成分の安らぎ効果が否定されたわけではないそうだ。

「抹茶には薄茶と濃茶がある。マウスに投与した抹茶抽出物は、ヒトの体重に換算すると薄茶3杯程度の量。濃茶なら1杯程度の量になる。健康増進に繋がるライフスタイルを新たに提案できる可能性はある」と、倉内助教は話している。

抗不安活性など産地ごとの個性を明らかにすることによるブランド力の強化も期待されている

今後、ヒトにおける抹茶の抗不安作用が検証されることが期待されている。倉内助教いわく、「土壌など生育環境によって抹茶に含まれる有効成分の組成が異なることも考えられるため、産地による抗不安活性の違いにも興味がある」とのこと。産地ごとの特長が明らかになって品質管理も徹底されれば、地域ブランドとして強みは増すはずだ。

なお、天然物の薬効の研究にも注力している熊本大学では、「薬草パーク構想」を掲げ、大学内の薬用植物園や薬草ミュージアム伝統薬資料室を“散策ルート”として整備・一般開放する取り組みも進められている。

リンク:熊本大学「薬草パーク構想」

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。