沖縄産素材の機能性研究や素材を活用した商品開発を行うサウスプロダクト(沖縄県うるま市、伊波匡彦社長)は、オキナワモズク由来フコイダンに免疫細胞増殖促進作用があることを発表した。フクイダンを主成分とした商品は“台湾版トクホ”として承認され、2018年6月から台湾における販売が本格的に動きはじめた。
フコイダンはコンブやワカメなどの褐藻類に含まれる硫酸化多糖の一種。抗酸化作用、抗炎症作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、整腸作用、血中コレステロール低下作用など、数々の健康効果が報告されているが、原料となる海藻によって化学構造や機能性は異なる。
オキナワモズク由来フコイダンの工業的生産技術を世界に先駆けて開発したのがサウスプロダクト社だ。オキナワモズクはナガマツモ科に属する褐藻類で、南西諸島の特産種。1970年代に栽培技術が確立され、生産量が拡大した。日本では現在、9割以上が沖縄県で生産されている。オキナワモズクにはアルギン酸が含まれていないため、サウスプロダクト社が開発したフコイダンは純度85%以上という高純度が売りだ。
サウスプロダクト社は、イスラムの戒律に従って生産された食品であることを示す「ハラール認証」を2014年に取得し、東南アジアを中心にフコイダンの輸出を手がけてきた。那覇市出身の長嶺竹明博士(群馬大学名誉教授)との共同研究では、フコイダンが体内に吸収されることや、食経験によって吸収能力が高まることなどが明らかになっている。今回は台湾で、免疫細胞増殖促進作用(免疫力を上げる作用)が認められた格好だ。
台湾には、日本における「特定保健用食品(トクホ)」に該当する「健康食品」という制度がある。13種の機能性表示の区分があり、台湾ではこれまでに100種類以上の商品が健康食品として認められている。承認を受けるには、科学的根拠(エビデンス)をもとに、日本の厚生労働省にあたる台湾行政院衛生署食品薬物管理局(TFDA)で審査を受ける必要がある。サウスプロダクト社は「免疫機能の調整効果」の区分で認可を得た。台湾におけるフコイダン商品の健康食品認定は初となる。
コンブやワカメ由来のフコイダンの免疫力増強作用はこれまでにも報告されてきたが、サウスプロダクト社は、研究実績の少なかったオキナワモズク由来フコイダンの免疫に関する機能の解明に成功した。
マウスを使った試験では、オキナワモズク由来フコイダンを体重1㌔㌘あたり、0、102.5、205、410、1025㍉㌘ずつ6週間経口投与し、脾臓由来免疫細胞の増殖作用やサイトカイン産生、マクロファージ貪食作用、NK細胞活性、抗体産生を調べ、非摂取マウス群と比較した。
その結果、オキナワモズク由来フコイダンを摂取したマウスで、免疫細胞の増殖促進作用、マクロファージ貪食作用およびNK細胞の活性化が確認された。これらの効果は、投与量に比例することもわかった。薬学博士でもある伊波社長によると、「人間の体重に換算すると、60㌔㌘あたり500㍉㌘以上の量で効果が期待できる」とのことだ。研究の成果は2016年5月、日本栄養・食糧学会大会でも発表され、現在論文投稿の準備をしている。
伊波社長は、「台湾で健康食品として登録されたことで、沖縄県の主要水産物であるオキナワモズクに新たな付加価値をつけることが可能になった。認知拡大に努め、市場拡大につなげていきたい」と話している。