“きどい味”が体に効く ファイトケミカル豊富な米沢名物のウコギ、健康増進に役立てて

地域発

ヒメウコギは山形県米沢市の伝統的作物として知られている。総延長20㌔㍍以上にもなる米沢市のウコギ垣は一種類の生垣としては日本最長で、質・量ともに日本一と評される。市民の暮らしの身近にあったウコギには、ファイトケミカルが豊富に含まれている。ウコギの機能性研究を進めてきた中心人物が、山形大学の尾形健明名誉教授(現・山形県立産業技術短期大学校長)だ。

ウコギが米沢に持ち込まれたのは戦国時代のこと。米沢藩の初代藩主・上杉景勝を支えた智将・直江兼続が、米沢の街づくりに取り入れたのがきっかけといわれている。その後、米沢藩第9代藩主・上杉鷹山が食用と防犯を兼ねた垣根としての植栽が奨励された。

ウコギの機能性研究は、山形県テクノポリス財団(1985年設立)付設生物ラジカル研究所が設立された1993年にスタートした。「東京大学を退職した後、山形に移られたテクノポリス財団・初代理事長の鎌田仁先生から、『初めて食べたウコギのおひたしがおいしかった。ウコギの成分分析をしてみないか』と声をかけられたのが始まりだった」と、尾形名誉教授は振り返る。

機能性研究のきっかけとなったウコギのおひたし

ウコギは、日本最古の薬草図鑑『本草和名』に記されている生薬だ。根皮は「五加皮」と呼ばれ、疲労回復、強壮、冷え性、腹痛や神経痛の治療などに使用されてきた。葉や枝は根皮ほど利用されていなかったが、米沢市では古くからウコギの新芽や新梢を食べる習慣があった。尾形名誉教授いわく、「当時、電子スピン共鳴法の応用研究を進めており、ウコギの葉を調べていくことになった」とのことだ。

尾形名誉教授を中心に産学官連携で成分分析に乗り出したところ、ウコギの葉には種々の生理作用があることが判明した。ポリフェノールやビタミン、ミネラル、食物繊維、アミノ酸などの成分が豊富に含まれていたのだ。乾燥した葉を緑茶と比べると、ポリフェノールと食物繊維はほぼ同量で、ビタミンCの量はウコギのほうが多いことがわかった。

尾形名誉教授は、「注目はポリフェノールといえるだろう。ウコギには、クロロゲン酸、ルチン、ゲンフェロールルチノシドが多く含まれている」と解説する。これらは、いずれも抗酸化作用の強いポリフェノールだ。尾形名誉教授らが開発した「電子スピン共鳴分析法」という方法で活性を調べた結果、ウコギの活性酸素の消去能は一般的な緑色野菜よりも高いことがわかった。動物実験では、ウコギ葉の抗酸化作用による過酸化脂質の減少が確認された。

「ポリフェノールがマルターゼという酵素の働きを阻害して血糖値の上昇を抑えることも発見した」と尾形名誉教授は続ける。動物実験を経て、健康な40人を対象にしたヒト介入試験が実施された。ウコギの乾燥葉のお茶300㍉㍑(ウコギエキス2%)を3ヵ月、朝・昼・晩の食事とともに飲んでもらうというものだ。その結果、食後血糖値のほか、中性脂肪の数値が改善していた。食後血糖値が低い人が低血糖になることはないそうだ。

現在はウコギ茶などが商品化されている

研究の成果は、ウコギ茶などの商品開発につながった。尾形名誉教授らが中心となって2015年に設立された「米沢うこぎ振興協議会」では、現在も大学・市・県・民間企業が一体となってウコギの栽培法や機能性に関する研究、情報発信を続けている。

「道の駅でウコギの葉摘み体験、茶飲み体験をやってみようという企画も検討されている。ウコギは“きどい”味がする。山形弁で『苦い』『渋い』という意味だ。きどいの正体であるポリフェノールを、健康のために取れる商品や場所を増やしていきたい」と尾形名誉教授は話している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。