宮古島を代表する薬草になった厄介者 隆起サンゴの島で育つ宮古ビデンス・ピローサの健康効果

地域発

沖縄本島の南西に位置する宮古島では、農薬・化学肥料・堆肥を使用しない”活自然農法”による宮古ビデンス・ピローサの栽培や加工、機能性研究が進められてきた。むさしのイミュニティグループ(沖縄県宮古島市、吉田八束社長)の開発した「宮古BP」が2016年に沖縄ブランドで初めて機能性表示食品(消費者庁)として受理されるなど、地域振興プロジェクトは島の新たな産業として確かな成長を続けている。

農林水産業と商工業が連携しながら推進する事業の参考モデル”農商工連携88選”にも認定されているプロジェクトの中心として奔走してきたのが、天然物の薬効をリサーチしてきた吉田八束社長だ。宮古島でのビデンス・ピローサの管理栽培や加工を検討するようになったのが1996年のこと。産学官で薬理作用の研究にも注力してきた結果、機能性表示食品の届出が実現。宮古BPシリーズに、「目や鼻の不快感を軽減する」という文言を表示することが可能となった。

農薬・化学肥料・堆肥を使用しない”活自然農法”で栽培されている宮古ビデンス・ピローサ

キク科のビデンス・ピローサは、「タチアワユキセンダングサ」という和名を持つ1年草または多年草だ。九州南部や沖縄諸島、先島諸島や小笠原諸島の道端や畑などで目にすることができる。白い小さな花を咲かせるが、多くの地域では雑草と見られている。

吉田社長はこの”厄介者”を島おこしのキーマンに指名した。宮古ビデンス・ピローサは益草であるという直感があった。「台風の後にも根を張るようすを見て生命力を感じた」というのが、その理由の一つだ。宮古ビデンス・ピローサは、サンゴの島と呼ばれる宮古島のサンゴ由来の天然ミネラルが豊富に含まれる地下水を使用して栽培されるようになった。

むさしのイミュニティグループの吉田社長

「環境を破壊することなく商業化していく、という方針は変わらない」と話す吉田社長。地元生産者とともに確立した農薬・化学肥料・堆肥を使用しない栽培法は、”活自然農法”と名づけられた。当初、雑草を栽培することに懐疑的だった人も、整然と管理された益草の農園に注目するようになった。

機能性研究も進められた。2000年には、夏季潰瘍とも呼ばれるリベド血管炎の再発予防や症状の軽減に宮古ビデンス・ピローサ含有茶が有効であると、北里大学付属病院の増澤幹男教授(当時)から発表された。リベド血管炎は、痛みを伴う潰瘍が下肢や腕に生じる皮膚疾患の一つだ。皮膚科学会のリベド治療の「血管炎・血管障害ガイドライン(2008年)」に、宮古ビデンス・ピローサ含有茶は記載されることとなった(当時の商品名「かんぽう茶」として記載)。

2004年以降は、沖縄産学官共同研究推進事業、地域新生コンソーシアム研究開発事業、農商工連携事業に採択・認定されるなど、産学官による宮古ビデンス・ピローサの研究が加速した。

宮古ビデンス・ピローサの加工のようす

カフェ酸誘導体、フラボン誘導体、アセチレン誘導体による抗酸化作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用をはじめ、さまざまな健康効果があることが明らかになり、糖尿病やガンといった病気を対象として実施された研究の成果は、「日本生薬学会」「日本皮膚科学会」「日本糖尿病学会」「統合医療学会」「日本ウイルス学会」「日本薬学会」などで発表されてきた。

【リンク】ビデンス・ピローサの学会・論文発表一覧(武蔵野免疫研究所)

現在、機能性表示食品として受理された宮古BPシリーズの粒食品とドリンクのほか、宮古ビデンス・ピローサを加工した健康茶やエキスを配合した基礎化粧品シリーズなども商品化されている。「国や県、島の協力があって、ここまでくることができた。研究の成果を還元していきたい」と話す吉田社長。今後は、宮古ビデンス・ピローサの認知アップと販売に力を入れていく方針だ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。