お酒で弱った肝臓にはシジミが効く――青森県産業技術センターと福島商店(青森市)による共同研究で、シジミの肝臓保護効果が明らかになりつつある。研究チームによって「アコルビン」と命名されたシジミトリペプチドが関与していることがわかってきた。
シジミには、ビタミンB12をはじめとする各種ビタミンのほか、オルニチン、タウリン、鉄分、カルシウム、亜鉛などの成分が豊富に含まれている。近年、特に注目されているのが、「オルニチン」だ。青森県産業技術センターと福島商店は、1998年から共同研究を開始。シジミに含まれるオルニチンの量を8倍に増やす冷凍保存法などを確立してきた。
日本で昔から強肝食として親しまれてきたシジミ。研究チームは、肝臓保護効果の解明にも取り組んできた。その過程で発見されたのが、β−アラニン、オルニチン、オルニチンという並びでペプチド結合した「アコルビン」だ。
東京工業大学の田川陽一准教授も研究チームに加わり、2011年に行われたマウスを使った動物実験では、ALTやASTといった肝機能値の改善効果のほか、脂肪肝の予防効果があることが確認された。
試験ではマウスを、アルコール入りの飼料と水、アルコール入りの飼料とシジミエキス、アルコール入りの飼料とアコルビンを与えるグループの3群にわけ、試験期間中の一定の時期に肝機能値を測定した。水、シジミエキス、アコルビンを加える前に、3群ともアルコール入りの飼料のみを7日間摂取している。
アルコール入りの飼料を7日間摂取したことにより、3群ともALT、ASTの顕著な上昇が見られた。その後、水、シジミエキス、アコルビンをそれぞれの群に加え、4日後と7日後にあらためて数値を測定。水の群と比較して、シジミエキスとアコルビンを摂取した群のALT、ASTには改善が認められた。シジミエキスよりもアコルビンのほうが効果は大きかった。
肝臓の組織を調べてみると、水の群は脂肪肝になっていたのに対し、シジミエキスとアコルビンの群に脂肪肝は認められなかった。アルコールによる細胞活性の低下が抑制されることも確認されており、効果はシジミエキスよりもアコルビンのほうが高かった。
青森県産業技術センター弘前地域研究所の内沢秀光室長(プロテオグリカン室)は、「肝臓保護効果を証明できた。2016年には特許の登録も実現している。コストの問題はあるが、ヒトを対象とした試験など、データを集めていきたい」と話している。
福島商店では、アコルビンを含むシジミエキスサプリ「肝助」が展開されている。1998年から販売されているロングセラー商品だ。同社生産開発課の白川和浩次長は、「より効率的にシジミの成分を取れるように研究を続けている。青森産シジミを健康増進に役立ててほしい」と、健康管理はもちろん、地域活性化にもつなげていく考えだ。