十勝ワイン搾りかすで口腔ケア 虫歯・歯周病予防の新素材、産学官研究で前進

地域発

十勝ワイン由来のパミスが、口腔ケアに役立つ新素材として注目を集めている。池田町(北海道十勝管内池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)と日本製粉による共同研究で、ノーステック財団の支援を受けながら、パミスエキスの虫歯や歯周病予防効果を明らかにしてきた。

パミスとは、ワインの醸造の工程で発生するブドウの搾りかすのこと。果皮や種子が含まれる。北海道では年間数百㌧、全国規模では数千㌧が生じている。多くは堆肥として活用されているのが現状だ。池田町では堆肥のほか、特産のいけだ牛の飼料としても利用されているが、付加価値の高い新たな活用法が模索されていた。

研究チームは、パミスに豊富に含まれている「オレアノール酸」に注目。有効成分を抽出したパミスエキスの開発に成功すると、広島大学歯学部の協力のもと、虫歯菌の増殖を抑制することを証明してきた。

十勝ワインの搾りかすから抽出したパミスエキス

虫歯菌のほか、北海道医療大学歯学部との共同研究では、歯周病菌に対する効果を調べる試験を実施。オレアノール酸の濃度を変えながら効果を測定し、歯周病菌の増殖を抑えるために最低限必要なパミスエキスの量を明らかにした。

試験管を使った基礎検討の後、ヒトを対象にした予備試験も行われている。1粒あたり9㍉㌘のオレアノール酸を含むパミスエキスタブレット3粒を男女19人に食べてもらい、唾液から検出される菌の増殖抑制効果を調べるというものだ。

試験では参加者に、プラセボ(オレアノール酸が含まれていないタブレット)を5日間食べてもらい、1週間の期間を空けた後、次はパミスエキスタブレットを5日間食べてもらった。プラセボ、パミスエキスタブレットはいずれも、1日めの夕食後、2〜4日めの朝・昼・夜の食後に食べ、1日めの朝・昼、5日めの朝・昼の食後の歯みがきはしないこととした。

試験に参加した19人のうち、抗生物質などの使用で菌の測定が困難であった5人を除いた14人を対象に、1日めと5日めの昼食から2時間後の唾液を採取して菌の量を測定したところ、パミスエキスによって菌の増殖が抑制されていることがわかった。唾液量やpHに変化は見られていない。

共同研究者の一人で、日本製粉イノベーションセンターの間和彦副センター長よると、「一定の時間、オレアノール酸を口の中にとどめておくのがポイント。試験では約3分で溶けるタブレットを用意した。今後は、パミスエキスが菌の増殖を抑えるメカニズムを解明していきたい」ということだ。

歯の喪失原因の約75%は、う蝕(虫歯)と歯周病によるものとされる。近年では、歯の喪失と認知機能低下の関連性、歯周病と誤嚥性肺炎の関係も明らかになりつつある。現在、虫歯予防の食品素材としてはキシリトール、歯周病予防の食品素材としてはカテキンが知られている。

間副センター長は、「研究開始当初の狙いどおり、虫歯や歯周病の予防という付加価値の高い新素材になりうることがわかってきた。北海道での加工が対象となる北海道食品機能性表示制度『ヘルシーDo』の認定取得も検討していきたい」と話している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。