ストレスや疲労感があるあなたに 青森発の健康食“ガマズミポリフェノール”

地域発

ピラカンサ、マンリョウ、ナンテン、ナナカマドなど、小さな赤い実をつける植物は数多く存在する。その多くは食用ではない。食用の小さな赤い実をつけ、その高い栄養価が注目されている数少ない植物が、青森県三戸地域などで見られるガマズミだ。

スイカズラ科のガマズミは、青森県南部で「ジョミ」または「ゾミ」と呼ばれる。6月に白い花が密集して咲き、8月には赤い実をたくさんつける。果実は直径5mmほどの大きさで、酸味がとても強い。普通の果実が熟すと枝から落ちるのに対し、ガマズミは多少ひからびた状態でも実がまとまって残り、冬でも枝から落ちることはない。

昔は山で狩りをするマタギが非常食として利用していたといわれる。山中での狩りに疲れたマタギは、ガマズミの酸味で体力を回復させていたのだ。冬の時期、食べられるものが少ないため、天からの恵みのように重宝していたとされる。ガマズミの名前の由来は、「神の実」が変化したという説もある。

ガマズミの機能性研究を続けているのが、弘前大学農学部の岩井邦久教授だ。「1997年ごろ、抗酸化物質の研究をしていた。ガマズミの有効成分を調べる実験を行ったところ、強力な抗酸化作用があることがわかった」という。抗酸化力を発揮するのは、ポリフェノールとビタミンC。ガマズミの果汁1㌘には、なんと4.8㍉㌘ものポリフェノールが含まれている。これは、ポリフェノールが豊富に含まれている赤ワインに匹敵する量だ。

岩井教授の研究グループは、ガマズミのポリフェノールの分析を進めた。その結果、「ジアニジン3-サンブビオンド(C3S)」「シアニジン3-グルコシド(C3G)」「クロロゲン酸」「メトキシクロロゲン酸」「ケルセチン」といったポリフェノールが検出された。岩井教授によると、「C3Sとメトキシクロロゲン酸はガマズミに特徴的な成分で、ほかにこれを含んでいる果実はない」とのこと。ちなみに、C3Sはガマズミの赤い色素のもとになっている成分だ。

ラットを使った動物実験も行われている。ラットにストレスを与えると、体内で活性酸素が多く発生する。活性酸素が増えると、血液中に酸化した脂質が増加したり、胃に潰瘍ができたりする。

ラットにガマズミ抽出物を与えてストレスを加える実験を行ったところ、ガマズミを投与していないラットに比べて胃潰瘍の形成が抑えられ、血液中の酸化した脂質も少なくなるという結果が得られた。ガマズミが活性酸素の働きを抑えたことに起因すると考えられるそうだ。

また、糖尿病のラットにガマズミ抽出物を投与する実験では、ガマズミを与えていないラットよりも血糖値が低いことが確認された。糖分を与える糖負荷試験でも、血糖値の上昇が抑えられるという結果が得られている。

ガマズミには1㌘あたり21.7㍉㌘ものリンゴ酸も含まれている。リンゴ酸は疲労回復に役立つ成分として知られている。ガマズミはストレスや疲労感がある人や、血糖値の高い人におすすめのスーパーフードといえそうだ。

ガマズミの実は、種が大きくて硬く、直接食べるのには向いていない。一方、果実は澄んだルビー色をしていて大変美しく、さらに果汁が豊富にとれることから、青森県で三戸町では町を挙げてガマズミを名産品にしようと取り組んでいる。現在、ガマズミの果実の有効成分を余すところなく抽出したドリンクや食品が商品化されているそうだ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。