乾燥ナマコ、肝臓再生効果の有用性確認!漁獲量減少を高付加価値化でカバー 海外にも魅力発信

地域発

長崎県大村湾産ナマコの新たな機能性が明らかになりつつある。尚絅大学短期大学部の小野要准教授の研究で、良質なアミノ酸を含む乾燥ナマコに肝臓の再生を促す働きがあることがわかってきた。現在、長崎県ではナマコの漁獲量が減少している。高付加価値化によって量を補うことで、漁業者の所得安定に繋げていく狙いがあるそうだ。

長崎県は九州一のナマコの産地として知られている。全国シェアは約5%程度だが、長崎県大村湾で取れるナマコは身がやわらかいと評判で、大村湾漁業協同組合、大村湾水産加工品販売、サティス製薬、長崎大学による農商工連携事業では、せっけんなど加工品の開発にも力を入れてきた。

保湿力の高いマナマコエキスを配合した石けん

ブランド化が進む中、資源量の減少という問題も顕在化しつつある。以前は200t以上あったナマコの漁獲量が100t前後に減少しており、漁業者の所得低下の一因となっている。安易な大量養殖による値崩れも懸念されるため、大村湾産ナマコのさらなる高付加価値化が課題となっていた。一方、香港では日本産乾燥ナマコが人気となっている。乾燥ナマコの輸出総額は水産物輸出総額の約7%を占めており、そのうち9割以上が香港向けとなっている。

尚絅大学短期大学部食物栄養学科の小野准教授は、肝臓再生効果に狙いを絞って研究を進めている。「乾燥ナマコは、多くの薬効がある漢方薬として珍重されている。ナマコには肝臓や血液中の脂質濃度を低下させるという報告がある。肝再生研究の実績がある長崎大学水産学部の橘勝康教授からアドバイスを受けながら、乾燥ナマコの新たな薬効として肝再生効果を調べることにした」と話すのが、小野准教授だ。

2017年、大村湾産の乾燥ナマコの肝臓再生効果がラットを用いた動物実験で検証された。乾燥ナマコ粉末を混ぜたエサを与える8匹と通常のエサを与える8匹に分け、乾燥ナマコ粉末摂取グループは、さらにエサ総量の1%に相当する乾燥ナマコ摂取群4匹と、5%相当を摂取する4匹に分けられた。

エサの投与から6日めにラットの肝臓の70%を切除し、その後も7日間飼育。飼育13日めには、開腹したラットの肝臓の状況が分析された。その結果、乾燥ナマコ5%摂取群のラットの肝臓は、1%摂取群よりも総たんぱく質量が多かった。摂取しなかった群と比較しても総たんぱく質量は有意に多く、細胞の発達度を示すAcPase活性が高いことも確認された。また、肝臓の再生初期に見られる2次ライゾームと呼ばれる細胞小器官も、乾燥ナマコ5%摂取群の肝臓では摂取しなかった群よりも鮮明だった。

動物実験で乾燥ナマコ粉末によって肝臓の再生が促されることが確認された

小野准教授によると、「乾燥ナマコ粉末の摂取で、肝臓の再生が促されることがわかった。乾燥ナマコに豊富に含まれるシスチン、バリン、タウリンといったアミノ酸の働きだと考えられる」とのことだ。

香港の中流以上の生活水準では乾燥ナマコが日常的に消費されており、今後も一定の需要が見込まれている。香港ではウイルス性の肝臓ガンも多く、肝臓の再生効果の研究が進めば、乾燥ナマコのさらなる需要に繋がるかもしれない。健康機能性研究には、漁業者の所得増加のチャンスを広げる可能性が秘められている。

長尾 和也

鳥取県出身。ライター。