伝統生薬“アカジソ”のハーブティ・せっけんを産学官で開発 和歌山の地域ブランドとしての定着図る 近畿大

地域発

近畿大学生物理工学部の堀端章准教授は、薬用植物で高野山に起源を持つアカジソの研究を進めている。2015年には、花野食品(和歌山県有田市、花野雅司代表)と共同で、「PERILLA ROUGE(ペリラルージュ)」というブランド名のアカジソ茶の開発に成功した。有効成分の含有量など品質を管理していくために、堀端准教授らは、遺伝資源としてのアカジソの種の保存にも力を入れている。

シソ科シソ属のハーブとして知られるシソには、刺身のツマなどに用いられるアオジソと、梅干しといっしょに漬け込まれるアカジソの2種類がある。アオジソは生葉でも芳香性があるのに対し、アカジソは漬け込む工程によって香りを蓄えていくのが一般的だ。堀端准教授は、和歌山県で受け継がれてきた“生葉でも芳香性のあるアカジソ”を研究対象としている。

アカジソには、ペリルアルデヒドやリモネンという香気成分、ロスマリン酸やカフェ酸というポリフェノールが含まれている

現在、国産の薬用ジソは安価な中国産に押されて衰退している。和歌山県における薬用ジソも例外ではなく、生産量の減少は続いているそうだ。和歌山県で栽培されてきた薬用アカジソは、奈良県五條市にある生薬メーカーによって厳しく管理されてきたが、現在、同企業は薬用ジソ事業から撤退している。

撤退のさい、門外不出だった薬用アカジソの種子は矢田農園(和歌山県海南市)に継承された。「矢田農園から相談を受けたのが研究のきっかけ。成分などを調べたところ、一部の会社が企業秘密として保有しているものを除けば、ほかに類を見ない性質のアカジソだということがわかった」と、堀端准教授は研究に至った経緯を振り返る。

2017年には、「ペリルアルデヒド」「リモネン」という香気成分と、「ロスマリン酸」「カフェ酸」というポリフェノールの4種に着目した成分分析が実施された。乾燥葉を比較したところ、薬用アカジソに含まれるペリルアルデヒドは一般的なアカジソの2倍、リモネンは約1.5倍であることがわかった。

ポリフェノールの含有量は、乾燥葉ではなく生葉を用いて比較された。ほかのシソには1㌘あたり0.5㍉㌘程度のロスマリン酸が含まれているのに対し、薬用アカジソの含有量は1㌘あたり0.84㍉㌘であることが確認された。カフェ酸は、ほかのシソと同程度の含有量だった。

和歌山産アカジソを使ったハーブティ「PERILLA ROUGE(ペリラルージュ)」

薬用アカジソに豊富に含まれるペリルアルデヒドやリモネンは、中枢神経に作用することでリラックス効果をもたらすことが知られている。ほかのアカジソよりも優位性が高いと評価した堀端准教授は、矢田農園と和歌山産アカジソ茶の開発に着手。試験販売などを経た後、最終的にプロジェクトを引き継いだ花野食品から「ペリラルージュ」が発売された。2015年のことだ。

堀端准教授は「将来的に、薬用アカジソを地域ブランドとして育てていきたい。ブランド化のためにはお茶だけでの展開は難しく、いくつかの商品ラインアップが必要になる」と課題を認識しており、抗アレルギー作用・美白効果・保湿作用などを持つロスマリン酸の機能性を活かした“アカジソせっけん”の開発にも挑戦している。こちらは、2019年中の発売を予定しているそうだ。

試作中のアカジソせっけん。2019年の発売を目指す

「薬用アカジソのような遺伝資源は、大学や植物園で資料的に管理されることが多い。10年20年と時間が経過するうちに、管理者がいなくなってしまうケースもある。実用化していかないと遺伝資源を維持できない」と話す堀端准教授は、商談会への参加など、研究だけでなく商品開発や販路開拓にも積極的に参加しているそうだ。

薬用赤ジソを安定的に生産していくために、最新の技術も活用されている。「シソの交雑や異種交配は、あっという間に発生する。その結果、有効成分の含有量が減少してしまうことも考えられる。ブランドの価値を守れるように、まずは6次産業化のグループで種子の管理を徹底していきたい。クローンによる量産の研究のめどもついたところだ」と堀端准教授は話している。

交雑や異種交配が起こった後、在来遺伝資源を取り戻すのは容易ではない。和歌山県で引き継がれてきた栄養成分豊富なアカジソを“地域の宝”として後世に残していくために、堀端准教授は事業としても成り立つ形を見据えた研究・開発を続けていく方針だ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。