地理的表示保護制度第1号 アントシアニン豊富なあおもりカシスの実力は 機能性解明なるか

地域発

ヨーロッパ原産のベリー類「カシス」。美容や健康にいいというイメージが定着しつつある注目の果実だ。日本国内では青森県がカシスの生産量一位を誇る。冷涼で寒暖差のある気候が栽培に適しており、青森市では1975年以降、栽培地域を広げていった。1985年には「あおもりカシスの会」が設立され、会員160戸からなる生産者団体による年間の生産量は、約11.6㌧になるそうだ(平成29年度)。

あおもりカシスは、2015年12月には「国の地理的表示保護制度(GI)」の登録第1号(農林水産大臣登録)となった青森の宝だ。品質、規格、生産実績、生産地適正などが総合的に評価された日本を代表する特産品の一つといえる。あおもりカシスの注目度は実際に高く、東京ビッグサイトにて8月22日〜23日の日程で開催された「アグリフードEXPO東京2018」の同会のブースには、多くの人による行列ができていた。

青森県内ではあおもりカシスを活用したレシピや商品開発が進められている

アグリフードEXPOは、全国の特産品が集うイベントだ。近年、各地で地域産品のブランド化が推進されている。その中でも、青森県はブランド化を得意とする都道府県の一つといえる。

廃棄されてきた鮭の鼻軟骨から抽出されたプロテオグリカンという潤い成分素材の評価は高い。現在、関節や肌の悩みに対応したサプリメントや化粧品の原料として各社で採用されている。

あおもりカシスの収穫のようす。手摘みで収穫されている

あおもりカシスも例外ではない。カシスの果実は、熟すと直径1㌢程度の濃い赤紫色になる。抗酸化物質のポリフェノールの一種であるアントシアニンが、同じベリー類であるブルーベリーの3〜4倍含まれていることが成分分析で明らかになっている。100㌘あたりのアントシアニン含有量は、原産である外国産のカシスより多いことも確認されている。青森県では現在、カシスアントシアニンに着目したブランドづくりが進められている。

カシスの機能性に注目しているのが、弘前大学農学生命科学部の前多隼人准教授(食料資源学)だ。前多准教授によると、「カシスアントシアニンには、末梢血流改善作用がある。先行研究では、冷え症や目の下のクマ、眼精疲労に対する有効性をはじめ、シワやたるみの予防効果があることもわかっている」とのことだ。アントシアニン量の多いあおもりカシスでの機能性の再現、新規性の探索が期待されている。

あおもりカシス レシピハンドブック

前多准教授が所属する弘前大学では、『あおもりカシス レシピハンドブック』を制作して、あおもりカシスのブランド化の取り組みを大学としてもPRしている。地元レストラン、パティシエ、食品加工業者などでは、あおもりカシスを活用したレシピや商品開発を進める動きも盛んだ。新たな名物が誕生している。

あおもりカシスの会の石岡会長によると、「あおもりカシスの供給地域は全国に広がり、利用される業種や用途も多様になってきた。農薬をほとんど使用していない点も評価されている」とのこと。栽培管理記録簿の記載が義務づけられ、完熟した果実は7月以降、手摘みで収穫されていくというあおもりカシス。ほのかな酸味の健康効果も科学的に証明されつつある青森の宝の今後の展開に注目したい。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。