GABA生産乳酸菌をかぶら寿司から分離!農産物の発酵に応用し富山発の“機能性野菜加工品”開発へ

地域発

富山県農林水産総合技術センター食品研究所の寺島晃也研究員は、「かぶら寿司」から分離した乳酸菌の研究を進めている。富山県の伝統食から分離された乳酸菌には、GABA(ν−アミノ酪酸)を生産する働きがあることがわかってきた。一連の研究は、富山発の“機能性野菜加工品”の開発に繋がるかもしれない。

石川県や富山県で親しまれてきたかぶら寿司

かぶら寿司は、酢飯を使わない“なれ寿司”の一つ。塩漬けして輪切りにしたカブに、ブリなどの魚をはさみ込んで麹に漬け込み発酵させて酸味を出している。石川県など旧・加賀藩の地域における正月料理の定番だったが、近年では一年を通して気軽に購入することができる。「かぶら寿司の栄養面についての相談が生産者からあり、伝統食の発展に繋がる研究ができないか考えるようになった」と話すのが、寺島晃也研究員だ。

寺島研究員は、ストレスを和らげる働きのあるGABAを生産している乳酸菌が見出され、付加価値の高い食品に使用されていることに着目。GABAを生産する地元の食品を探索するために、かぶら寿司をはじめとする366の食材などから約2000株の乳酸菌を分離した。「分離するまでに約3年の月日がかかった」と振り返る寺島研究員は、2009年から地道に研究を進めていった。

366の食材などから約2000株の乳酸菌を分離していった(寺島研究員提供)

約2000株から、GABAを生産する菌株が4株見つかった。最も多くのGABAを生産する乳酸菌は、かぶら寿司から分離されたものだった。寺島研究員は、「GABA乳酸菌」を用いたかぶら寿司を試作した。

「流通している一般的なかぶら寿司には、100㌘あたり45㍉㌘のGABAが含まれている。それに対し、分離したGABA乳酸菌で作ったかぶら寿司には100㌘あたり580㍉㌘と、GABAの含有量が大幅に増えることがわかった。かぶら寿司由来の乳酸菌を用いているので、伝統的なかぶら寿司と比べて味に遜色はない。実用化しやすい研究成果だと考えている」と、寺島研究員は話している。

GABAを生産する乳酸菌の粉末化に成功

その後、GABA乳酸菌を小規模生産者や一般家庭でも研究成果を活用できるようにするために、寺島研究員はフリーズドライによる粉末化に乗り出すとともに、発酵食品として加工されていなかった農産物の乳酸発酵の可能性を探っていった。その結果、トマトが加工に適していることがわかり、GABAを豊富に含むトマトケチャップやゼリー、トマトパンの試作品が完成した。

GABAを豊富に含むトマトケチャップなどを開発

寺島研究員は「富山県における農業はコメが主となっている。そのほかの農業産出額は大きいとはいえない。6次産業化の流れの中でも、健康機能性は高付加価値を生む重要なキーワードだ。現場の農家さんが手軽に作れる加工食品の開発に繋がれば」と話し、一連の研究成果の実用化を待望している。

高齢化の進む日本では、病気などによってふだんの生活が制限されることのない「健康長寿」が望まれている。地域の農業の活性化にも繋がるGABA乳酸菌は、富山発の機能性野菜加工品として全国展開される可能性を秘めている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。