緑内障にミカンポリフェノールが有効か ヘスペリジンの神経保護作用発見

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東北大学大学院医学科研究科の研究グループは、マウスを使った動物実験で、ミカンの皮に含まれるポリフェノールに緑内障の悪化を防ぐ働きがあることを報告した。研究成果は学術誌「Scientific Reports」に掲載されている。

緑内障は現在、日本人の中途失明原因第1位となっている。網膜神経節細胞や視神経がダメージを受けることで、視野狭窄などが生じる。緑内障は40歳以上の20人に1人に見られ、家族に患者がいる人のほか、低血圧や冷え性の人も注意が必要だ。

一般的に緑内障は、眼圧が高くなって網膜が圧迫されるのが原因といわれているが、日本では眼圧が正常範囲である「正常眼圧緑内障」が多い。点眼薬やレーザーにより眼圧を下げるのが、基本的な治療法となるが、眼圧下降以外の治療法も求められている。

緑内障の進行・悪化には、酸化ストレスの関与がある。実際に、血液中の抗酸化力が弱い緑内障患者は緑内障が重症化しやすいといわれている。

東北大学の中澤徹教授らは、マウス培養網膜細胞に対して抗酸化作用を発揮する素材を調査した。41種類の食品を探索した結果、ミカンの皮に含まれるポリフェノールの一種「ヘスペリジン」に最も強い抗酸化能があると判明。その後、薬剤を注射して網膜障害を誘発したマウスにヘスペリジンを与えたところ、投与しなかったマウスに比べて、網膜神経節細胞が多く残っていることがわかった。

酸化ストレスの指標となる脂質過酸化物や細胞死を誘導するカルパインというたんぱく質の活性化に加え、炎症性サイトカインの発現を抑制することで神経保護作用が得られた結果とされる。さらに、電気生理実験や行動学的評価により、ヘスペリジンが網膜障害により生じる脳波の減弱や視力低下を防ぐことも明らかとなった。

研究チームは、「ヘスペリジンは食品素材であることから、サプリメントなどにより緑内障性の網膜神経節細胞障害を軽減させる可能性がある」としている。

【リンク】東北大学:ミカンのポリフェノールによる緑内障治療の可能性を示唆 ―ヘスペリジンは網膜細胞障害において神経保護作用を持つことを発見―

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。