アカモクの抗肥満効果解明へ!郷土料理にアカモクを加えた新メニューを地域連携で考案 福井県立大

地域発

2020年1月、福井県立大学生物資源学部の村上茂教授は、褐藻類のアカモクに生活習慣病の予防効果があることを動物実験で明らかにした。多糖類やカロテノイドなどアカモクに含まれる成分の健康効果は報告されているが、海藻をそのまま食べたときの機能性は未解明だった。北陸新幹線の福井県内開業を見据えて、村上教授は同県の事業者とともに、特産品や伝統的な食材とアカモクを組み合わせた新メニューの開発を目指している。

2020年1月の記者発表で研究成果を報告した村上教授

ヒバダ目ホンダワラ科のアカモクは、日本各地の沿岸部に自生している褐藻類。海に近い一部の地域では、郷土伝統食として親しまれてきた。アカモクには、アルギン酸やフコイダンという多糖類やフコキサンチンというカロテノイドが多く含まれており、近年、生活習慣病の予防に役立つ食材として注目度が高くなっている。アルギン酸やフコイダンには糖・脂質の吸収抑制作用が、フコキサンチンには脂肪燃焼促進作用があると報告されている。

一方、アカモクは繁殖力が強く、コンブなどほかの有用な海藻類の成長を妨げる。また、漁船のスクリューに絡みつく厄介者という側面もあり、漁業関係者は駆除に奔走している。大量に駆除されたアカモクの大部分は廃棄されており、漁業関係者は有効利用法を模索してきた。

漁業従事者によって駆除されているアカモク

福井県と連携しながら健康食材としてのアカモクについて研究しているのが、福井県立大学生物資源学部の村上茂教授だ。2019年4月、福井県食品加工研究所から県内で駆除されたアカモクの有効利用について相談されたのがきっかけだった。村上教授は海藻の機能性研究を研究テーマの一つとしており、紅藻類のエゴノリの高血糖や脂肪肝の抑制作用などを明らかにしてきた。

「多糖類やカロテノイドといったアカモクに含まれる活性成分の機能性は、すでに報告されている。サプリメント原料としての利用を念頭に置いたものだ。味噌汁や酢の物などに使う“食材としてのアカモク”の健康効果に注目しており、そのまま食べたときの機能性を確認したいと思った」と話す村上教授は、アカモクの抗肥満効果を動物実験で検証した。

糖尿病のモデルマウスを用いた実験では、通常食を与える群、高脂肪食を与える群、高脂肪食に凍結乾燥したアカモク粉末を重量比で2%および6%添加したエサを与える群の合計4群を設定し、14週間飼育した。

左から通常食、高脂肪食、高脂肪食+アカモク6%、高脂肪食+アカモク2%

その結果、アカモクを与えた群では、高脂肪食による体重増加が抑制され、肥満の元凶である内臓脂肪量の増加が有意に抑えられていた。さらに、高脂肪食による血糖値の上昇、肝機能の低下や肝臓の脂肪蓄積、血中の悪玉コレステロールの増加などもアカモク投与で抑制された。肥満や糖尿病、脂肪肝や脂質異常といった生活習慣病の予防に、アカモクが有効である可能性を示唆するデータが得られた。

「糞の中性脂肪量も調べたところ、アカモクの6%投与群で増加が認められた。アカモクが中性脂肪の糞への排出を促した結果で、抗肥満効果にも繋がると考えている。フコイダンやアルギン酸といった多糖類による効果だろう」と村上教授は解説する。

アカモクの抗肥満効果には、フコキサンチンの働きも関係しているそうだ。村上教授は、「すでに報告されているとおり、フコキサンチンには脂肪の燃焼促進作用がある。動物実験で脂肪燃焼に関係する遺伝子の発現を調べていく予定だ」と、今後の展望を語る。

2023年の春、北陸新幹線の福井県内開業が予定されている。県内の観光業を後押しするため、村上教授はアカモクを使った新名物の開発にも取り組んでいる。「福井県屈指の温泉であるあわら温泉の宿泊施設と二人三脚で、試行錯誤しながらアカモク料理を考案中だ。福井県の特産品や伝統的な食材とアカモクを組み合わせた料理の開発を目指している。また、県内企業とアカモクの特長を生かした新製品の開発にも取り組んでいる。今後、アカモクの機能性解明をさらに進め、新名物の付加価値を高めていきたい」と村上教授は話している。厄介者とされてきたアカモクの有効利用の糸口が見えてきた。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。