チシャトウでアレルギーが軽減!岡山発の農商工連携支援事業

地域発

岡山県の特産品として知られているのが、モモやブドウだ。1年を通じて温暖で降水量が少ない瀬戸内特有の天候が栽培に適しているといわれている。果物王国のイメージが強い岡山県で近年、全国から注目されている野菜がある。レタスやサラダナの仲間であるチシャトウだ。チシャ類の原種で、チシャトウの別名は茎レタスやアスパラガスレタスといわれる。

チシャトウは古くから中国を中心に世界で広くで栽培され、日本でも一部の地域で自家栽培する家庭があった。美しい翡翠色の茎が特徴で、縁起のいい野菜とされてきた。中国伝統医学では肝機能を保護する働きがあるといわれ、それも長年にわたってチシャトウが重宝されてきた理由の一つだ。

チシャトウが属するチシャ類には、抗アレルギー作用があるとされるケルセチンやクロロゲン酸、カフェ酸といった成分が含まれている。岡山市にある大森食品は、大学と連携してチシャトウの抗アレルギー作用など機能性を検証してきた。付加価値をつける狙いがある。なお、チシャトウの高付加価値化は農商工連携支援事業に認定されている。岡山大学との共同研究を紹介しよう。

チシャトウ粉末でくしゃみと鼻かき行動が改善

2週間かけてマウスの体内に抗体を作り、アレルギーの原因となる物質を投与してアレルギー性鼻炎のモデルマウスを作製した後、チシャトウの葉や茎の部分が1%含まれている飼料を4週間与えたマウスとチシャトウを与えないマウスに区別し、くしゃみ反応や鼻をかく行動の回数を比較したところ、チシャトウ粉末を与えたマウスはくしゃみ反応と鼻かき行動がともに減少するという結果が得られた。

さらに、チシャトウ粉末による皮膚掻痒行動の抑制作用についても検証された。実験では、コンパウンド48/80というアレルギー反応を招く物質を使ってかゆみを引き起こし、皮膚掻痒行動のあるマウスを使用した。マウスにチシャトウの葉や茎の水抽出物を投与し、投与していないマウスとコンパウンド48/80で皮膚掻痒行動を誘発したマウスを比較したところ、チシャトウを投与したマウスは、投与していないマウスに比べてアレルギー反応が抑えられていることがあきらかになった。

大森食品の岸野章丈会長は、「チシャトウは花粉症に対する抗アレルギー作用の特許が認められている。野菜の中でこの特許を持っているのはチシャトウだけだ」と胸を張る。これまでさまざまな食材で抗アレルギー作用が確認されているものの、有効性は十分といえず、高い効果が期待できる食材の発見が望まれてきた背景がある。

最近では、食物アレルギーのアナフィラキシーショックを抑制する働きについても研究が進められている。食物アレルギーを起こしやすい食品として、卵や牛乳、小麦(三大アレルゲン)がよく知られるとことだ。このほかにも大豆、魚類、肉類などの身近な食物もアレルギーを引き起こすことがある。アナフィラキシーの発作はアレルギー性鼻炎の発症メカニズムと共通点が多い。岸野会長は「食物アレルギー対策食としての可能性を秘めている」と、さらなる研究を続けていく考えだ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。