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国産ショウガ搾りかすの有効活用法確立 ショウガオールリッチな”温活素材”SUNショウガ

血流改善素材として知られ、食卓でもおなじみもショウガの特性に着目したユニークな研究がある。三生医薬(静岡県富士市、松村誠一郎会長兼社長)は、ショウガに含まれている特有の辛味成分由来の機能性成分を短時間で効率的に増やす製法の開発に成功した。国産ショウガの搾りかすの有効活用法を模索する中で結実した画期的な成果だ。

SUNショウガカプセル

ショウガは熱帯アジアを原産とするショウガ科の多年草で、香辛料として世界じゅうで用いられている。生薬としての用途もあり、生のショウガの根茎をそのまま乾燥して得られる生姜(ショウキョウ)や、湯通ししたり蒸したりしたショウガを乾燥させた乾姜(カンキョウ)などが利用されている。

ショウガが日本に伝来したのは2〜3世紀で、栽培は奈良時代に始まったとされる。現在、日本におけるショウガの生産量1位を誇るのは高知県で、40%以上のシェアを占める(2位は熊本県、3位は千葉県)。

「ショウガには、ジンゲロールとショウガオールという機能性成分が含まれている。いずれもショウガ特有の辛味成分で、血流改善、血管拡張作用があることが知られている」と話すのは、三生医薬社研究開発部の渡邉博文氏だ。ジンゲロールは、手足など末梢血管を拡張させることで体内にこもった熱を放出し、冷えた血液を循環させることで深部体温を下げる働きがある。一方のショウガオールには、熱を産生して体を温める働きがあるという。

ショウガにはジンゲロールとショウガオールという機能性成分が含まれている

生のショウガにはジンゲロールが多く含まれているが、ショウガオールはわずかな量しか含まれていない。ショウガオールは加熱や乾燥による脱水反応によってジンゲロールが変性することで増えていく成分だ。夏場には、冷奴などにサッパリ感をもたらすおろしショウガが添えられ、冬場の鍋などにはポカポカ感をもたらすショウガが使用される。ジンゲロールとショウガロールの性質を、経験的に使い分けてきたことがわかる。

冷え症などの改善には、血流循環を亢進させて体を温めるショウガオールのほうが有効であることを示唆する先行研究がある。ショウガオールはジンゲロールよりも少量で血流量(ラットの腸管血流)を有意に増やすというものだ。

一般的に、生のショウガに微量しか含まれないショウガオールの量を1.5~2倍程度に増やすには、100℃から120℃の温度で、数10時間から数100時間かけて加熱する必要があるとされる。三生医薬社は、「亜臨界水処理」という技術を用いることで、短時間で効率的にショウガオールを増やすことに成功した。

渡邉氏は、「高圧下にあって100℃から374℃までの沸騰しない水を亜臨界水と呼ぶ。数MPaという高圧状態で水の温度を200℃近くまで上げ、ジンゲロールをショウガオールに変換していく。国産ショウガの搾りかすの有効活用法を研究してきた中、亜臨界水処理との組み合わせで、生の70倍以上の量のショウガオールを数10分程度で富化できるようになった」と解説する。

高知県産をはじめとする国産ショウガの搾りかすを使用し、安全な水を用いて製造されたショウガオールリッチな新素材は、「SUNショウガ」と命名された。ショウガオールの働きを検証するために、ソフトカプセルに充填されたSUNショウガを用いた冷水負荷試験が実施されている。冷水負荷試験とは、冷水に1分間手を浸し、その後の皮膚表面温度を5分ごとにサーモグラフィーカメラで観察していくというものだ。

SUNショウガによる血流改善(冷水負荷試験)

SUNショウガカプセルを摂取しない場合、冷水に手を浸してから30分経過した後も皮膚表面温度が水冷前の状態に戻らなかったのに対し、ショウガオール1.125㍉㌘を含むSUNショウガカプセルを摂取すると、5分後には皮膚表面温度が回復していくようすが確認された。

渡邉氏によると、「体の血流改善による冷え症改善、脳の血流改善による脳機能改善、基礎代謝の向上による免疫力改善、体脂肪の減少効果など、さまざまな用途が考えられる」とのことだ。搾りかすの新たな価値が見出されたことで、ショウガの生産者の所得向上も期待されている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。