Categories: 地域発

血管内皮機能の改善にローヤルゼリーが有効か 動脈硬化の予防食として期待 熊本大

熊本大学大学院の藤末昂一郎助教らは、健康な100人を対象とする試験で、ローヤルゼリーの血管内皮機能の改善効果を明らかにした。血管内皮機能の改善は、心臓病や脳卒中、腎臓病を引き起こす動脈硬化の予防につながると考えられている。同じ試験では、肝機能値の改善効果を示唆する結果も得られた。一連の研究成果は2021年9月、日本動脈硬化学会学術誌である『Journal of Atherosclerosis and Thrombosis』のオンライン版に掲載された。

乳白色のクリーム状のローヤルゼリーは、ハチの社会で女王蜂だけが食べることができる貴重なミツバチ産品である。働きバチが食べた花粉やハチミツをもとに作られており、ローヤルゼリーには、必須アミノ酸を含むアミノ酸をはじめ、ビタミンやミネラルなどが豊富に含まれている。健康効果も注目されており、高血圧・糖尿病・脂質異常症の改善などがあると報告されている。

熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学の藤末昂一郎助教は2018年以降、血管内皮機能に対するローヤルゼリーの働きについて研究してきた。血管内皮機能とは、血管の内側の層の表面を覆っている血管内皮を構成する血管内皮細胞の働きだ。「血管内皮細胞は、血管の動きに関わる生理活性物質を放出しており、血管の収縮や弛緩、炎症反応などに関わっている。血管内皮機能が低下すれば、心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化が進展していく」と話すのが、藤末助教だ。

血管内皮機能に対するローヤルゼリーの効果について研究している熊本大学大学院の藤末昂一郎助教

狭心症・心筋梗塞といった虚血性心臓病や脳卒中は、日本における主要な死因で、要介護の原因の4分の1を占めている。「これらのリスクを下げるには、血管内皮機能を維持する必要がある。血管内皮機能は、高血圧・糖尿病・脂質異常症のほか、喫煙や運動不足などによって低下していく。これらは、動脈硬化の原因でもある。ローヤルゼリーの高血圧・糖尿病・脂質異常症などの改善効果は動物実験などで確認されているものの、血管内皮機能に関する報告はなかった」と、藤末助教は研究の背景を解説する。

試験で使用された粒食品。左がローヤルゼリー、右がプラセボ

藤末助教は健康な100人を対象とする試験を実施。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの治療中の人、喫煙習慣のある人を除外して残った88人をローヤルゼリー摂取群46人、プレセボ群の42人の2群に分けて、それぞれの粒食品を1日3粒、4週間飲んでもらい、試験前後の「RHI」を比較した。藤末助教によると、「RHIは血管内皮機能の指標だ。簡単にいうと、血圧を測るように腕に装着したバンドをはずして、血流を再度促したときの血管拡張のようすを調べた」とのことだ。

ローヤルゼリー摂取群のRHIの変化率が上昇していることがわかった

試験前と4週間後を比較すると、ローヤルゼリー摂取群のRHIの変化率は上昇していた。プレセボ群との間には有意差も認められている。「RHIの上昇は、血管の動きがスムーズになったことを意味する。動脈硬化の予防にもつながる結果といえる。さらに、ローヤルゼリー摂取群ではALT、γGTPという肝機能値の改善が確認された。一方で、有害事象は見られなかった」と藤末助教は解説する。これらの研究成果は2021年9月、日本動脈硬化学会学術誌である『Journal of Atherosclerosis and Thrombosis』のオンライン版に掲載された。

今後は、有効成分の特定や作用機序の解明が課題となる。「今回の研究では、有効成分やメカニズムについては検証できていない。先述のとおり、血管内皮機能の低下には高血圧・糖尿病・脂質異常症などが関与している。ローヤルゼリーは、血糖値の調整に関わるインスリン抵抗性、血圧の調整に関わるレニン・アンジオテンシン系にプラスの影響を与えることがわかっている。ローヤルゼリー成分と血管内皮機能の関係も明らかできるといいと考えている」と、藤末助教は話している。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。

Share
Published by
日本の身土不二 編集部