静岡県に次いで全国で2番めの緑茶の生産量を誇るのが鹿児島県だ。鹿児島県産の「べにふうき」には、抗ウイルス作用や抗がん作用があることが報告されてきた。有機無農薬の緑茶栽培や、緑茶の健康効果について研究している鹿児島大学医学部の園田俊郎名誉教授に話を聞いた。
茶葉は、空気中の炭酸ガスや根から吸収した水分を利用して、日光のエネルギーをもとに炭水化物が作りながら成長していく。そのさいお、茶葉に有害な作用を及ぼす「過酸化物質」という副産物も生まれる。過酸化物質に対抗するために作られるのが「ポリフェノール」だ。緑茶ポリフェノールには、過酸化物質を中和する抗酸化作用がある。なお、人間を含む動物の体内でも過酸化物質は作られている。激しい運動や大きなストレスが主因といわれている。
園田名誉教授と米国立予防研究所の研究者らは、緑茶ポリフェノールの抗酸化作用について試験を行い、緑茶ポリフェノールに過酸化物質を中和して解毒する働きがあることを証明した。具体的には、人間の末梢血液リンパ球(白血球の一種)が細菌の毒素を認識して起こる炎症反応によって生み出された過酸化物質を中和していたのだ。
園田名誉教授は試験結果について、「炎症反応や過酸化物質は、白血病やガンが起こる過程で見られる。緑茶ポリフェノールの抗酸化作用は、人間の発ガン予防に広く役立つのではないか」と話している。
園田名誉教授は、緑茶ポリフェノールの抗ウイルス作用についても研究している。ウイルスに感染したリンパ球が、緑茶ポリフェノールによって細胞の自然死である「アポトーシス」を引き起こすことがわかってきたという。がん化した細胞はアポトーシスによって、ウイルスに感染したリンパ球がウイルスとともに死滅すると考えられている。
実際に試験も行われている。園田名誉教授らは、緑茶から抽出したエキスを粉末にしてカプセルに詰めた緑茶の粒食品を被験者に飲んでもらい、白血病ウイルス(HTLV-1)に感染した細胞がどのように減少するかを調べた。緑茶カプセルを飲む群(37人)と飲まない群(46人)に分けて、5ヵ月にわたって試験を実施。その結果、飲まなかった群でウイルスの量は増えていたのに対し、緑茶カプセルを飲んだ群ではウイルスの減少が認められた。
園田名誉教授は、「緑茶ポリフェノールの生成量は日照時間や天候に左右される。緑茶の効能の中で抗酸化作用や抗ガン作用に注目するならば、夏葉のほうがいいだろう」と話している。
現在、鹿児島県南薩摩地方では、有機無農薬の緑茶栽培も積極的に行われている。油粕と魚粉を配合した有機肥料を使用したうえで、浄化した地下水を散布することにより、地下1メートルまでふかふかした土壌ができあがる。この土壌のおかげで、農薬を使わずに健康な緑茶を育てることができるようになった。味と香りは、ともに上質。農薬散布による健康被害を考え、このような有機農法に取り組むようになったという。
「鹿児島のおいしくて安全な緑茶を飲んで、皆さんの健康の維持・増進に役立ててほしい」と、園田名誉教授は話している。