農商工連携の取り組みが全国で加速している。長崎県平戸市の株式会社アセットボックスも、農商工連携事業の認定を受けている事業者の一つだ。平戸産ツルレイシの機能性に目をつけた同社は、乾癬やアトピーを対象とした皮膚の保護剤を開発。「プレミアムマックビー」「マックビープレミアムクリーム」は全国でも知名度を上げ、「平戸つる草」と呼ぶ人も出てきた。
【リンク】長崎県農商工連携ファンド事業支援事例紹介:ツルレイシ(国産)高機能化と皮膚保護クリームの開発~平戸産ツルレイシを使った副作用ゼロの無添加クリーム(軟膏剤)の開発~
ツルレイシの原産は南米で、海外ではモモルディカチャランティアと呼ばれている。いわゆるニガウリやゴーヤの仲間で、日本ではツルレイシやつる草として親しまれている。61種類もの有効成分が含まれ、特に注目されているのが「モモルディシン」「チャランティン」「バーバスコサイド」「ジアチン」「ラノステノール」だ。
平戸産ツルレイシは細胞活性力が強力で、皮膚の線維芽細胞を使った実験では、標準的な試薬「L‐アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩n水和物」の185倍の細胞活性があることが確認された。そのほかにも、抗酸化作用や抗炎症作用が認められているそうだ。アセットボックス社は、地元の契約農家と連携しながらツルレイシの無農薬栽培に取り組み、商品化を実現した。
研究が進むとともに、平戸産ツルレイシを愛用する乾癬患者は口コミで増えていった。乾癬は治療の難しい皮膚疾患の一つとして知られている。2017年5月、モデルの道端アンジェリカさんが乾癬であることを告白したことでも話題となった。
乾癬の9割以上を占めているのが、「尋常性乾癬」だ。皮膚が赤くなって盛り上がったところに鱗屑と呼ばれる銀白色のかさぶたができ、フケのようにぽろぽろとはがれ落ちていくのが主な症状だ。原因は解明されていないが、尋常性乾癬では通常の10倍の速さで細胞の入れ替わりが行われ、皮膚がどんどん表皮に積み重なっていくことがわかっている。ストレスが引き金となることもあり、糖尿病や脂質異常症を併発している場合も少なくない。
ひが皮膚科クリニック(沖縄県)の比嘉禎院長は、乾癬の治療に平戸産ツルレイシを取り入れている。「半数ほどに乾癬の症状改善が見られている。皮膚の細胞が修復されることで、異常だった新陳代謝の周期が速やかに調整される。抗炎症作用も大きいだろう」という。
平戸産ツルレイシの研究領域は、がんや認知症にも広がっているそうだ。