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ぶどう山椒の抗アレルギー作用を実証 ZP1・2の脱顆粒抑制効果を確認 和歌山高専

和歌山工業高等専門学校の奥野祥治教授らは、和歌山県の特産品であるぶどう山椒の機能性研究を続けている。これまでの研究で、ピロリ菌や胃ガン細胞の増殖抑制効果、アレルギーの抑制効果を確認。アレルギー抑制効果をもたらす有効成分の構造も特定されており、ゲラニオール誘導体が関与成分であることが明らかになっている。

和歌山県は、日本一の山椒の生産量を誇る。日本で収穫される山椒の品種には、兵庫県の朝倉山椒や岐阜県の高原山椒、沖縄県の鰭山椒などがあるが、和歌山県では、大粒の実がブドウの房のように連なるぶどう山椒が栽培されている。和歌山県の中央部に位置する有田川町が栽培の最も盛んな地域で、中でも有名な産地として知られているのが、日本における山椒の80%を生産していた時期もあった清水地区だ。

日本一の山椒の生産量を誇る和歌山県ではぶどう山椒が栽培されている

山椒には、サンショオールやサンショアミド、リモネンやゲラニオールなどが含まれており、利尿作用・抗菌作用・健胃作用があるとされ、古くから生薬の原料としても使用されてきた。和歌山工業高等専門学校生物応用化学科の奥野祥治教授は、ぶどう山椒の機能性研究を続けている。「生産者の高齢化などによって生産量が減少傾向にある中、和歌山県産のぶどう山椒の新たな魅力や可能性を発信していきたいと考えている」と話すのが奥野教授だ。

奥野教授は、2010年にぶどう山椒の機能性研究に着手。最初に検証したのが、ピロリ菌に対する効果だった。「ピロリ菌に山椒エキスを添加したところ、抗菌効果が実証された。その後、胃ガン細胞でも同様の培養実験を行った。その結果、ガン細胞の増殖抑制効果が確認された。主に2種類のゲラニオール誘導体による働きであることも明らかになった。山椒の学名『Zanthoxylum piperitum』をもとに、有効成分は便宜的にZP1、ZP2と呼んでいる」と、奥野教授は解説する。

その後、奥野教授は、国内で患者数が増加しているアレルギーを対象として和歌山県立医科大学(宇都宮洋才准教授、河野良平助教)と共同で研究を続けた。花粉症などのI型アレルギーは、マスト細胞と呼ばれる白血球の脱顆粒が原因で起こる。IgE抗体を介して抗原の情報をマスト細胞が受け取ったときに放出されるのが、炎症を引き起こすヒスタミンなどの化学伝達物質だ。

山椒に抗アレルギー作用があることは知られており、関与成分にはヒドロキシαサンショール(HAS)が挙げられていた。しかし、今回の研究では、これまでの説とは異なる結果が得られた。奥野教授によると、「ラットのマスト細胞を用いて脱顆粒の抑制効果を調べたところ、HASは脱顆粒抑制効果をほとんど示さなかった。一方で、ZP1、ZP2に強い作用があることがわかった。これらの成分が、脱顆粒の反応にかかわるいくつかのシグナルをブロックしていた」とのことだ。

動物実験でも山椒エキスの抗アレルギー作用が証明された

ZP1、ZP2の脱顆粒抑制効果を確認すると、動物実験で抗アレルギー作用が検証された。マウスの耳介にIgE抗体を投与。翌日にZP1、ZP2を経口摂取させた後、抗原を尾静脈から投与してアレルギー反応を確認するという内容だ。実験では、経口投与による効果が証明された。「青色の色素を注入して耳介組織を観察する方法を採用した。ZP1およびZP2を投与したグループでは、脱顆粒が抑制されていることがわかった」と奥野教授は解説する。

最新の研究では、血糖値の上昇にかかわる酵素の働きを山椒エキスが阻害することも明らかになりつつある。糖質の分解を抑えて、消化・吸収を緩やかにする効果が期待されるそうだ。そのほか、“山椒精油”の機能性についても研究が進められている。奥野教授によると、「現在、室内のウイルスを除去する働きを調べている。また、山椒の香りによって食欲やストレスをコントロールできるだけではなく、免疫力の向上にも機能性を示すのではないかという仮説をもとにした研究を進める計画もある」とのことだ。ぶどう山椒の新たな機能性の報告が期待されている。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。

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