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新型コロナウイルスの不活化効果を確認!宮崎発、ブルーベリー茎・葉の抗ウイルス作用に注目

宮崎大学の森下和広教授らは、新型コロナウイルスに対するブルーベリーの茎・葉抽出成分の効果を検証してきた。「くにさと35号」という品種を使用した実験では、新型コロナウイルスの不活化効果を確認。その作用機序についても明らかになりつつある。一連の研究成果をもとにした特許はすでに出願済みで、現在、さまざまな商品の開発が検討されている。今後、変異ウイルスに対する有効性も検証していく方針だ。

ラビットアイブルーベリー「くにさと35号」は宮崎県の特産品の一つ

宮崎県では、ラビットアイブルーベリー「くにさと35号」が栽培されている。くにさと35号(以下、「ブルーベリー」とする)は、宮崎大学農学部応用生物科学科の國武久登教授らによって開発された品種だ。同県では2004年以降、産学官でブルーベリー葉の健康効果を研究してきた。プロジェクトを推進してきた一人が、同大学フロンティア科学総合研究センターの森下和広特別教授だ。

森下教授は、東京大学医科学研究所、アメリカ国立がん研究所、国立がんセンター研究所で白血病の研究を続けてきたが、2000年に宮崎大学に赴任してからは成人T細胞白血病(ATL)の研究に力を入れてきた。ATLは白血病の一種で、HTLV-1というウイルスが原因で発症する。「ATLは、九州を中心とする西日本に多いことがわかっている。宮崎も例外ではなく、県内における白血病のうち、ATLは約半数を占めている」と話すのが、森下教授だ。

ブルーベリー葉にはHTLV-1やC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス作用があることが確認されている

森下教授はATLの診断法・治療法の開発のほか、抗ウイルス作用を指標として植物のスクリーニングを続けてきた。森下教授によると、「宮崎県産の農産物を中心に200〜300種類の植物を調べてきた結果、HTLV-1に対する活性が最も強いのはブルーベリー葉であることがわかった。ブルーベリー葉の抽出物に含まれるプロアントシアニジンの働きで、ウイルスの増殖に必要な情報伝達をブロックする作用が見出されている」とのことだ。

メチル化カテキンが豊富に含まれる「べにふうき(アッサム系実生選抜のべにほまれとダージリン在来の枕Cd86を交配した茶品種)」にも、HTLV-1に対する抗ウイルス作用があると報告されていた。ブルーベリー葉には、べにふうきの約100倍の活性があった。

その後、宮崎大学の研究チームは、C型肝炎ウイルスに対する同様の効果を確認。さらに、茎にも抗ウイルス作用があることを明らかにした。「抗ウイルス作用について研究してきた経緯があり、2020年8月には新型コロナウイルスに対するブルーベリーの茎・葉の有効性を見ていくことになった」と振り返る森下教授。神奈川県衛生研究所から分与された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を用いて、研究を進めることが決まった。

バイオセーフティーレベル3の施設において適切な病原体封じ込め措置のもと実験は進められた

実験には、サルの腎臓上皮由来の培養細胞を使用。ブルーベリーの茎・葉の熱水抽出物を添加してから5時間後、培地に新型コロナウイルスを加えた。2時間の静置によってウイルスをサルの細胞に感染させた後、ウイルスが存在しない新しい培地に移して3日間培養した。「実験には、茎・葉の熱水抽出物をカラムクロマトグラフィーを用いて分離した10種類の分画物を使用した。効果を比較した結果、プロアントシアニジンを多く含む分画に、ウイルスを不活化させる最も強い効果が認められた」と、森下教授は解説する。

プロアントシアニジンを多く含む分画のSARS-CoV-2に対する効果(宮崎大学プレスリリースより)

一連の研究成果は特許の出願につながり、2021年1月には記者発表が行われた。現在、民間企業との間で、さまざまな商品の開発が検討されているとのことだ。今後は、変異ウイルスに対する効果発現のメカニズムの解明が重要な課題となる。「断定的なことはまだいえないが、ウイルスに対する働きを見てきた経験をもとに考えると、ポジティブな結果が得られるのではないかと期待している。さらなる研究を続けていきたい」と、森下教授は最後に話してくれた。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。

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