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美容・健康成分を肌から補給 京都薬科大発ベンチャー、日本初の“貼るサプリメント”開発

京都薬科大学発ベンチャー企業のコスメディ製薬(京都市、神山文男社長)は、栄養成分を肌から取り入れる経皮吸収の技術を用いた日本初のシート貼付型サプリメント「貼るラボ」を開発した。商品ラインナップは4種類。発売予定日は2018年7月23日となっている。

同社は2001年の創業以来、「皮膚」「貼る」「吸収」をキーワードに、経皮吸収製剤の研究・開発を重ねてきた。ヒアルロン酸とコラーゲンでできた“マイクロニードル”と呼ばれる微細針(長さ200㍃㍍)を使った「TTS(transdermal therapeutic system )」の技術は2016年、「大学発ベンチャー表彰2016」の新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞に、2017年には「第10回 日本バイオベンチャー大賞」のフジサンケイビジネスアイ賞に選ばれた実績を持つ。

貼る前のマイクロニードル。ヒアルロン酸の“容器”に薬剤が注入される

薬剤を注入したマイクロニードルを貼ると、肌の浅いところでヒアルロン酸が溶けていく。溶解後、従来は注射でしか投与できなかった薬剤が、毛細血管から全身に運ばれていくというのがTTSの技術だ。同社はこれまでに、経皮吸収型ワクチンや、糖尿病・骨粗しょう症治療薬の開発を目指し、大阪大学や京都薬科大学と共同研究を続けてきた。

貼ってから60分後のマイクロニードル。容器が溶けるとともに薬剤が浸透していく

貼るラボシリーズも、「皮膚」「貼る」「吸収」に特化したアイテムだ。マイクロニードルと同様、コスメディ製薬社の独自技術で開発された経皮吸収タイプの医療用粘着テープが商品のベースとして採用されている。2017年に新設した自社の桂第二工場(京都市)で、化粧品GMPに準拠した医薬品製造レベルの厳しい品質管理のもと製造されているのも強みといえるだろう。

マイクロニードルの使用例(美容成分が浸透していく)

サプリメントを経口摂取した場合、錠剤だと10%、カプセルだと20%程度しか吸収されないといわれている。化粧品事業部の柳敏弘部長によると、「経口投与の吸収効率は、個人差の大きい腸内環境の影響も受ける。定められた目安量を取っても、期待される効果にばらつきが出る」という問題があったという。一方、シート貼付型サプリメントの場合、有効成分が毛細血管に直接吸収されるメリットがある。

サプリメントの有効成分は4時間程度で体外に排出されるのに対し、シート貼付型サプリメントは、24時間かけてゆっくりと持続的に体内に取り込まれるように設計されている。

使い方も簡単だ。柳部長によると、「体毛の少ないところに1日1枚、シートを貼って使うだけ。はがれにくい胸元などがおすすめだ」とのこと。同社が行った実験では、経口投与よりも経皮吸収のほうが試薬の血中濃度を長く維持できることが確認されているそうだ。

貼るサプリ“貼るラボ”シリーズ

7月に発売となるのは、食事や栄養の偏りが気になる人に向けた「ビタミンBミックス(30枚)」、飲み会や外食が多くなりがちな人に向けた「ハングオーバー(20枚)」、きれいな肌と体づくりを目指す人に向けた「ビタミンACE(30枚)」、多忙な人やエネルギッシュに過ごしたい人に向けた「エナジーミックス(30枚)」の4アイテム。いずれも2,100円(税別)となっている。

「7月以降、自社通販サイトで販売を開始し、ドラッグストアやジムなど販路の拡大を目指していく」と話す柳部長。年内にはラインナップも増やしていく予定だ。嚥下機能が低下して粒食品の飲み込みができない高齢者向けの“貼る栄養剤”の開発を望む声も一部から上がっている。今後の商品開発にかかる期待は大きい。

詳細は公式サイト(http://harulab.jp/)にて。問い合わせは同社サポートセンター(0120-57-1510)まで。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。