間質性膀胱炎は、中高年以降の女性で増えている病気の一つだ。富士山麓にある株式会社不二工芸製作所(静岡県富士宮市)のアグリ事業部「不二バイオファーム」は、間質性膀胱炎に対する発酵そばの芽の効果について研究を進めている。
1946年の創業以降、木工業を営んできた不二工芸製作所がアグリ事業に進出したのは、1996年のこと。スプラウト野菜の栽培をスタートさせ、2001年には健康食品業界に参入し、機能性研究を本格化させた。もちろん、そばの新芽も不二バイオファームで生産されている。
そばの新芽は、種子を暗室で4日ほどかけて発芽させた後、ハウス内で1週間ほど光を浴びながら成長していく。無農薬、水耕栽培というのが特長だ。
発芽直後のそばの新芽には、種子の2倍以上のルチンが含まれている。そのほか、アントシアニン、オリエンチン、イソオリエンチン、ビテキシン、イソビテキシンなどポリフェノールの量も多い。赤い茎の部分に、いわゆる“ファイトケミカル”が凝縮されているのだ。
信州大学との共同研究で、不二工芸製作所では、そばの新芽から抗酸化作用や抗アレルギー作用、抗炎症作用を持つとされる「ケルセチン」を抽出することに成功した。乳酸発酵によって、ルチンがケルセチンなどのルチン類縁体に変化する性質を利用したものだ。そばの新芽をミキサーにかけた後、2種類の乳酸菌を加えて1週間発酵させると発芽そば発酵エキスができあがる。
信州大学や静岡県立大学との共同研究で、発酵そばの芽には血圧降下作用や抗アレルギー作用があることが報告されてきた。研究の成果を受けて開発されたのが「そばの芽ぐみFBP‐100」だ。富士宮市内にあるGMP認定工場で製造されている。
発酵そばの芽が間質性膀胱炎の症状を和らげるかもしれない――間質性膀胱炎研究会で患者を対象とした試験結果を報告したのが、大分県別府市の中村病院の副院長・泌尿器科センター長を務める酒本貞昭医師だ。
難病指定されている間質性膀胱炎は、膀胱の上皮と筋肉の間にある間質という粘膜部分に炎症が生じる病気だが、原因は明らかになっていない。膀胱が硬く、萎縮していき、膀胱の中にためられる尿の量が減少していき、頻尿や残尿感、尿意切迫感や膀胱痛が起こる。大腸菌などの細菌によって膀胱に炎症が生じる一般的な膀胱炎とは異なり、抗生物質が効かないことがわかっている。
酒本貞昭医師が間質性膀胱炎による痛みを訴える患者11人(男性2人、女性9人、平均年齢60歳)を対象に、治療と並行して発酵そばの芽エキスを朝・昼・晩の食後に2粒ずつ飲んでもらうという試験を行った結果、11人中9人に症状の改善が見られた。“症状”とは、間質性膀胱炎診療ガイドラインの質問に沿って総合的に判断された、排尿の状態、排尿時の問題点、頻尿や尿意切迫感、痛みのことだ。
不二工芸製作所の渡邉専務によると、「今年から来年にかけて、静岡県立大学で間質性膀胱炎の患者を対象とした臨床試験を予定している」とのこと。エビデデンスを確立するために、共同研究をさらに進めていく方針だ。