Categories: 地域発

プロアントシアニジンが豊富なレンコンの可食部・節・皮を有効活用、機能性原料の開発目指す 佐賀県

レンコンの美容・健康効果が明らかになりつつある。佐賀県工業技術センター食品工業部の鶴田裕美特別研究員らは、脂質代謝の改善効果や紫外線による肌老化の抑制効果などレンコンの機能性を報告してきた。プロアントシアニジンというポリフェノールの働きであることがわかっているそうだ。佐賀県は、未利用となっている地域資源を食品や化粧品の原料として活用する事業を推進している。廃棄されることも少なくないレンコンから“高付加価値商品”が生まれるか──。鶴田特別研究員に話を聞いた。

佐賀県のレンコン生産量は日本3位。収穫量は10年で70%増加

佐賀県は全国3位のレンコン生産量を誇る。日本全体で生産量の緩やかな減少傾向が続く中、作付面積を拡大してきた佐賀県では、レンコンの収穫量が増えている。具体的には、生産量は直近10年で70%以上増加した。出荷量を伸ばしてきた一方で、出荷規格外や加工工程で廃棄される皮や節なども増えており、関係者からはレンコンの有効活用を求める声も上がっていた。新たな用途として期待されているのが、“機能性素材としてのレンコン”だ。現在、佐賀県ではレンコンの美容・健康効果の検証が進められている。

加工品の製造過程で廃棄されるレンコンは少なくない

「レンコンには、野菜の中でも比較的多くのポリフェノールが含まれている。ポリフェノール含量は、可食部よりも未利用部に多い。過去に総ポリフェノール量を可食部と比較したところ、節には5〜6倍、皮には2〜3倍の量が含まれているという結果が得られた。抗酸化活性についても、同様の傾向が確認されている」と話すのは、佐賀県工業技術センター食品工業部の鶴田裕美特別研究員だ。鶴田特別研究員は2006年以降、レンコンの機能性研究を続けてきた。

レンコンの乾燥粉末。左から可食部、皮、節。節には最も多くのプロアントシアニジンが含まれている

鶴田特別研究員が行った動物実験では、レンコン摂取による脂質代謝の改善効果が確認されている。「肥満モデルマウスをレンコン乾燥粉末の摂取群と非摂取群に分けて3週間飼育したところ、摂取群では肝臓の肥大化とトリグリセリド濃度が顕著に改善していた。肝臓における炎症性サイトカインの遺伝子発現量の低下も認められ、脂肪肝・脂肪肝炎の予防につながる可能性が示唆された。原因を探っていくと、善玉ホルモンのアディポネクチンが増加していることがわかった」と、鶴田特別研究員は振り返る。

鶴田特別研究員がレンコンポリフェノールの構造解析を進めたところ、関与成分としてカテキンとガロカテキンが結びついたプロアントシアニジンが特定された。鶴田特別研究員によると、「プロアントシアニジンが脂肪酸を合成する酵素の働きを抑制した結果、マウスの脂肪肝が改善したと考えている。実験ではレンコン可食部の乾燥粉末を用いたが、プロアントシアニジンがより多く含まれている節や皮も脂質代謝の改善に役立つ機能性食品原料になりうる」とのことだ。

最近の研究では、美容分野の機能性素材としてレンコンポリフェノールを活用できる可能性も見えてきた。「紫外線を浴びると皮膚を構成する真皮のコラーゲンやプロテオグリカンの分解が進み、シワの形成やハリの低下につながる。食品工業部の岩元彬副主査が中心となって行った細胞実験では、レンコン抽出物を添加することで炎症性サイトカインの遺伝子発現量が減り、コラーゲンやプロテオグリカンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼという酵素の産生が抑制されるという結果が得られている」と鶴田特別研究員は解説する。

レンコンポリフェノール 精製物。機能性食品や化粧品の原料としての用途を模索

鶴田特別研究員らは、食品や化粧品の原料としてレンコンを利用するために、安全かつ効率的にプロアントシアニジンを抽出法もすでに確認している。「佐賀県は、『さが機能性・健康食品開発拠点事業』『唐津コスメティック構想』を推進している。佐賀県の地域資源を活用した機能性原料の供給や商品開発を後押しするものだ。サプリメントをはじめとする加工食品のほか、レンコンを使った化粧品などをお届けできるように研究を続けていきたい」と、鶴田特別研究員は最後に話してくれた。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。