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モチムギの新品種“キラリモチ”で便秘・高コレステロール値が改善!健康維持・増進に役立てて 美作大

大麦β-グルカンの含有量を増やしたモチムギの新品種「キラリモチ」。美作大学大学院の曽根良昭特任教授は、キラリモチ摂取と高齢者の健康状態の関係について研究している。2017年には、キラリモチの継続摂取による血中コレステロール値の改善効果が確認された。モチムギの生産量の増加に伴い競争が激化する中、美作市の生産者や加工・販売を手がける事業者と連携しながら、“岡山県美作市産キラリモチ”の販路開拓を進めている。

岡山県美作市はモチムギの新品種「キラリモチ」の産地の一つ

モチムギはイネ科オオムギの一種で、もちもち・ぷちぷちとした食感を持つ。「β-グルカン」という水溶性食物繊維が豊富に含まれており、腸内環境をはじめ、血糖値やコレステロール値、中性脂肪などの改善効果があると報告されている。

β-グルカンの含有量が通常品種の1.5倍ほどに多くなったモチムギの新品種が、キラリモチだ。農研機構・西日本農業研究センターが育種し、2012年に品種登録認定されたキラリモチは現在、全国各地で生産されている。従来品種は炊飯時に白色から褐色に変化するのに対し、キラリモチは変色することなく炊き上がる。見た目や食感も好評で、キラリモチの人気は高まりつつある。

美作大学大学院生活科学研究科の曽根良昭特任教授は2014年以降、キラリモチと高齢者の健康状態について研究を続けている。キラリモチを生産している岡山県美作市から相談を受けたのが、研究のきっかけだったという。「高齢者の健康について、20年以上研究してきた。介護老人保健施設などの入所者は、大腸機能の低下や運動不足から起こる便秘に悩みがちだ。2014年から2016年にかけて実施した試験で、施設利用者の便秘の改善にキラリモチが役立つことがわかった」と話すのが、曽根特任教授だ。

2017年には、自宅で生活しているボランティアの協力のもと、6ヵ月のキラリモチ摂取による血中コレステロール値の改善効果が検証された。男性18人(65〜72歳)と女性25人(57〜73歳)の計42人に、キラリモチを3割配合したもち麦ご飯を1日3回食べてもらい、HDLコレステロール値とLDLコレステロール値を測定するという内容だ。

キラリモチで脂質代謝異常が改善した

結果を統計的に検定した結果、キラリモチを食べる前の血中LDLコレステロール値が基準値より高い人の値は6ヵ月後には有意に減少し、基準値より低い人は変化が見られなかった。高齢者の健康維持・増進にキラリモチが役立つ可能性を示した曽根特任教授は、「脂質代謝異常の改善では、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールを減らしすぎずに、悪玉コレステロールのLDLをコントロールしていくことが大切になる。モチムギからの食物繊維の摂取にはこの効果がみられるようだ」と総括する。

岡山県美作市産キラリモチ 「もち麦くん」

モチムギの人気は高まりつつあり、生産量が急増している。2018年に約2000tだった生産量は、2019年には8000tを超えた。一方、モチムギの新品種も増えており、加工食品原料として利用する上で産地内の品種統合が課題となっている。キラリモチの普及に力を入れている美作市では、生産・加工・販売といった事業者の連携を推進している。「キラリモチをテーマとした健康講座やレシピ開発などのイベントも数多く手伝っている。まずは美作市民にキラリモチを取り入れた食生活を定着させたい」と、曽根特任教授は最後に話してくれた。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。

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