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佐賀大発、イヌリン豊富なキクイモ新ブランド「サンフラワーポテト」 生活習慣病予防効果解明へ

佐賀・福岡地域機能性農産物推進協議会を運営している佐賀大学では、地元の企業・自治体・生産者と連携して、キクイモの新系統「サンフラワーポテト」のブランド化を推進している。現在、収穫の最盛期を迎えているサンフラワーポテトには、健康効果のある成分が従来の系統よりも豊富に含まれている。農学部や医学部など学部横断で科学的なデータを蓄積し、佐賀大発ブランドの認知アップを図っていく。

キクイモはキク科ヒマワリ属の多年草。北アメリカ原産のキクイモが日本で見られるようになったのは、江戸時代末期のことだ。観賞用として伝来し、その後、家畜の飼料用作物や食用として栽培されるようになったといわれている。

佐賀大学発のキクイモの新系統「サンフラワーポテト」

キクに似た花を咲かせ、イモのような根が取れることから命名されたキクイモ。”天然のインスリン”とも呼ばれ、高い血糖値や中性脂肪を下げる働きのほか、腸内環境を改善させる働きのあることが国内外で報告されている。「イヌリン」という水溶性の食物繊維が、キクイモの機能性成分の一つだ。

2017年に佐賀県三養基郡基山町で実施された試験では、町民にキクイモを提供して継続的に食べてもらった結果、腎機能の改善効果が示唆された。また、佐賀大学では糖尿病予備群の人を対象として、キクイモの摂取による食後血糖値の改善効果について詳細な調査が進められている。

「”健康食材”であるキクイモは佐賀県でも栽培されているものの、全国、県内においても認知度はまだまだ低く、加工された付加価値の高い商品もほとんど存在しないのが現状」と話すのは、機能性農産物キクイモ研究所の所長を務める佐賀大学農学部の松本雄一講師だ。

佐賀県は高血圧による人口別死亡者数がワースト1位で、佐賀市については人工透析患者数の伸び率が全国ワースト2位という統計がある。そうした中、松本講師はキクイモを生活習慣病の予防・改善に役立てようと奔走してきた。

「透析導入の引き金となる糖尿病や高血圧の対策は喫緊の課題だ。身近な食材を活用して生活習慣病の増加に歯止めをかけたい」と松本講師が話すとおり、協議会や研究所では、キクイモの高付加価値化のほか、機能性の解明と商品開発の支援にも力を入れている。

機能性農産物キクイモ研究所の所長を務める佐賀大学農学部の松本雄一講師

2015年からプロジェクトの中心となって調査・研究を開始した松本講師は、全国から26系統のキクイモを取り寄せ、それぞれの特性を分析していった。「白絹病という病害に強い」「表面の凹凸が少なく加工しやすい」「イヌリンが豊富に含まれる」という条件のもとに厳選された種イモは、「サンフラワーポテト」と名づけられ、2017年には商標登録された。サンフラワーポテトには、在来のキクイモよりも20%も多くのイヌリンが含まれていることがわかっている。

「イヌリンは糖の吸収を緩やかにして、血糖値の急上昇を抑える。また、血糖値を取り込むために必要なインスリンの効きが悪くなってしまうインスリン抵抗性の改善も期待できる。今後、キクイモ中の抗酸化物質やカリウムなど、イヌリン以外の成分の特性も解明していきたい」と、松本講師はキクイモのさらなる機能性を探索していく方針だ。

サンフラワーポテトは現在、佐賀、福岡、熊本、山口という4県の農家で栽培されている。「ゴボウのような風味で、レンコンのような食感を楽しめる。揚げてもよし、煮てもよし、焼いてもよし。生でも食べられる。生産量・流通量はまだ少ないが、生活習慣病の予防・改善に関するデータを蓄積していき、サンフラワーポテトの普及に貢献していきたい」と、松本講師は話している。

なお、1日100㌘(イヌリン10㌘)ほどのキクイモを食事の前に食べれば、健康効果が期待できるとのこと。機能性農産物キクイモ研究所の取り組みは、地域の健康問題の解決だけではなく、新たな産業創出という面でも注目されている。

リンク:佐賀大学農学部松本研究室

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。