発酵パパイアで高齢者の免疫機能回復 2段階発酵でメディカルフルーツがパワーアップ

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パパイアは16世紀にヨーロッパ人に発見されてから、民間伝承薬的に使用されてきた。“メディカルフルーツ”とも呼ばれる未熟果パパイアを発酵させた粉末には、免疫機能を回復させる働きなど、さまざまな機能性があることが明らかになりつつある。

九州大学農学研究院の中山二郎准教授は、発酵パパイア粉末が高齢経管栄養補給者の免疫細胞の活性化や腸内環境改善に役立つことを突き止めた。研究成果は2017年1月、米国のオンライン科学雑誌『PLOS ONE』に掲載された。

【リンク】九州大学:発酵パパイア粉末が高齢経管栄養補給者のナチュラルキラー(NK)細胞活性を回復 高齢者の感染症予防や腸内環境の改善などに期待

“メディカルフルーツ”とも呼ばれる未熟果パパイアの断面

免疫力は加齢とともに低下し、高齢者は感染症を起こしやすくなる。高齢の経管栄養補給者は、その傾向がより顕著となる。発酵パパイア粉末の試験は、中山先生と湯野温泉病院(山口県周南市)の藤田雄三医師の共同で行われた。湯野温泉病院で経管栄養補給中の患者15人(全20人、年齢67歳以上)に発酵パパイア粉末を投与するというものだ。

1日3g、または9gの発酵パパイア粉末を食事に混ぜる形で30日間食べてもらった結果、ウイルスやがんに対抗するNK細胞の活性化、免疫機能の回復が認められた。一方、炎症にかかわるインターフェロンやサイトカインの値に変化はなかった。また、1日9gの発酵パパイア粉末を摂取したほうが効果は高いことがわかった。免疫にはNK細胞に代表される自然免疫と獲得免疫がある。発酵パパイア粉末は、インターフェロンやサイトカインを介さない経路で、高齢経管栄養補給者の低下した自然免疫の働きを回復させる可能性が示唆された。

さらに、試験前後に便に含まれる腸内細菌を分析した結果、発がんリスクを高めるクロストリジウムシンデンス、菌血症を引き起こすエガセラ・レンタという菌が減少していることがわかった。発酵パパイア粉末の成分分析を行った中山先生によると、「消化管から吸収されにくい高分子のポリフェノールが、発酵によって低分子のフェノール酸類に分解されることで免疫系や腸内細菌への作用を発揮している可能性が考えられる」とのことだ。

中山先生の研究チームによる試験で使用された発酵パパイア粉末は、カリカセラピ社(福岡市中央区)から提供された。同社では、発酵パパイア粉末の研究を20年以上続けている。未熟果パパイアには、ビタミン、ポリフェノール、フラボノイドなどが豊富に含まれているとされるが、品種や産地などで成分は異なる。野菜や果物の味が品種や産地ごとに違うのを思い浮かべるとわかりやすい。

二次発酵中のパパイア

カリカセラピ社では、フィリピン原産の野生種の未熟果パパイアを現地と福岡工場で2段階発酵させて、エキスを粉末化している。発酵パパイア粉末ができるまでに3年以上の歳月を要する。同社研究開発部研究課長の村上真樹医学博士によると、フィリピンの野生種を採用しているのは「栽培種と異なり、厳しい環境を生き抜いて子孫を残すため、野生種のほうが生命力が強いとされる」という理由からだ。写真を見せてもらったところ、栽培種よりも野生種の果皮のほうが色濃く、種もぎっしり詰まっていることがわかった。これが、いわゆるファイトケミカルにつながるということだ。

同社では、約20年前から岡山大学医学部の森昭胤先生(名誉教授)と共同で研究を進めてきた。森先生は酸化ストレス研究の第一人者の一人だ。酸化ストレスに対するパパイア発酵粉末の効果を調べたところ、活性酸素消去能が強いことが明らかになった。細胞の修復を助けることや、免疫機能や腸内環境への効果が期待されているほか、睡眠や肌にも好影響を与えることが考えられる。発酵パパイア粉末は、ストレス社会の救世主となるかもしれない。なお、村上博士によると、「発酵パパイア粉末は就寝前に飲むのがおすすめ」ということだ。

糖、アミノ酸、脂肪酸のほか、有機酸やポリフェノールなどの代謝産物を網羅的に調べていくメタボローム解析によって、パパイア発酵エキスには数々の有用成分が含まれることが解明されている。同社では、健康効果と有効成分の特定を今後も進めていく方針だ。

日本の身土不二 編集部

“機能性研究”という切り口で、農産物・海産物といった地域資源の高度付加価値化、ゼロエミッションの取り組みを取材しています。